イベント開催報告

令和6年度ワークショップ 産学連携ワークショップ in TAMA

 事業アイデアの具体化を図っていく中で技術課題にぶつかるケースが大いに存在します。そうしたケースにおいて産学連携を一つの手段として活用できるようになることを目的に、産学連携の理解促進及び機運醸成、研究・技術シーズとのマッチングを図るための交流イベントを令和6年11月29日に開催しました。

 国立大学法人電気通信大学をはじめとした広域TLO(技術移転機関-大学の研究者の研究成果を特許化し、企業へ技術移転する法人)であるキャンパスクリエイト社や農工大・多摩小金井ベンチャーポートを運営する中小企業基盤整備機構に産学連携の全体像や支援内容をご紹介いただいたほか、実際に産学連携に取り組むコアミックス社からの事例紹介、多摩地域の大学に関連する企業による技術シーズの紹介を行いました。また、プログラム終了後の交流会では個別相談会を実施し、登壇者と密にコミュニケーションをとりネクストアクションにつながるような機会を提供しました。

この報告では、ワークショップ当日の様子をご紹介します。

産学連携部門による取組紹介

―産学連携のススメ-大学と取り組む新事業創出-

株式会社キャンパスクリエイト 代表取締役 髙橋めぐみ氏

 髙橋氏より「産学連携のススメ-大学と取り組む新事業創出-」をテーマに、株式会社キャンパスクリエイトの事業紹介、企業が産学連携に取り組むメリットや課題、成功させるためのポイントについてご紹介いただきました。

 産学連携で企業が取り組めるテーマとして、新製品・新規事業開発、自社製品の改良だけでなく、社員教育という面でも活用ができる点をお話しいただきました。また、産学連携を成功させるためのポイントとして、企業側のニーズを研究者にしっかり伝えること・研究者からの報告や相談に対してきちんとレスポンスすること、といったコミュニケーションの重要性や、成果物や知的材財産権の取り扱いについてイメージしておくことの大切さをご説明いただきました。

―研究開発型ベンチャー企業が集う起業家育成施設-

農工大・多摩小金井ベンチャーポート-独立行政法人 中小企業基盤整備機構 農工大・多摩小金井ベンチャーポート 賀門宏一氏

 賀門氏より中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)の概要や、中小機構のスタートアップ支援メニューについてご説明いただきました。また、中小機構が運営する「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」についてご紹介いただきました。

 農工大・多摩小金井ベンチャーポートは、ベンチャー企業・中小企業が東京農工大学をはじめとした多摩地域の大学・研究機関の知財・技術を活用した事業展開の促進を目指して運営されています。特徴としては、アクセスの良さや農工大をはじめとした多摩地域の大学と協力関係ができていること、入居者に対して勉強会・メンタリング・専門家派遣・中小機構の持つ支援ツール等を通じて伴走支援していることをお話しいただきました。また、支援する際に意識しているポイントとして、資金ショートの前兆を早めに察知するよう心がけていることや、マーケティング思考をもってメンタリングすること等が挙げられました。

産学連携の事例紹介

―漫画を読んでいるときの人の感情の可視化に関する研究―

株式会社コアミックス 取締役 花田健氏

株式会社コアミックス MAI研究室 松本悠佑氏(工学博士)

事例紹介では、漫画を読んでいるときの人の感情の可視化に関する研究を、電気通信大学等と進めているコアミックス社に、産学連携に取り組んだ背景や、実際に取り組んで良かったことを踏まえてお話しいただきました。

 同社は、2000年に代表の堀江信彦氏が集英社から独立して創業した漫画出版社です。漫画家の育成にも注力する中で、「ネームバリューのない新人作家や新作は認知されにくい」「大きな資本がない限りは広告されることはあまりない」という点に課題を感じていました。そこで、「個人の好みに合ったレコメンドを通して認知度の向上をできないか?」というアイデアを思いつき、電気通信大学とともに、「面白い」という感情を数値化する研究を開始しました。

 その結果、特許を取得することに成功し、現在はアプリ化して実証実験の準備をしています。また、東京大学や芝浦工業大学とも新たに共同研究を進めているとのことです。産学連携を進めるうえで重要なこととして、「企業と大学のチューニング」が重要とお話しいただき、大学側とコミュニケーションをとる際には、企業側のニーズを包み隠さず伝え、大学側の興味・関心とズレた際には別の大学と共同研究することも視野に入れておく柔軟性が重要とお話しいただきました。

 最後に、当時学生側で共同研究に参加し、のちにコアミックス社に入社を決めた松本氏からは「共同研究を通じてコアミックス社の雰囲気を知ることができ、将来自分が働く姿をイメージできた」と、産学連携は事業開発だけではなく、学生のリクルーティングへの活用も期待できる点をお話しいただきました。

シーズプレゼン

 今回のワークショップでは、多摩地域の大学に関連する企業より、会社概要や技術シーズの内容、活用事例や協業ニーズ等についてご紹介いただく「シーズプレゼン」を実施しました。ご登壇いただいた企業は以下のとおりです。

  • 株式会社インフォモーフ

株式会社インフォモーフは東京都立大学が運営するインキュベーションルームに入居する企業です。カメラ、映像システム、AI関連の技術を活用した事業開発サポート、360度動画撮影による3Dモデリング技術によって手軽に3D空間を構築できる「Infomorph 3D」や、360度カメラを⽤いたWeb会議システム「Infomorph Live」等の自社サービス開発を手掛けています。

今後の事業拡大に向けて、自社のコア技術である3Dモデリングを活かした社会課題解決を目指し、 建設・不動産・まちづくり・製造業・点検業務などにおけるデジタルツインの活用、 医療・ヘルスケア分野での画像解析やAI診断⽀援等での協業パートナーを募集しています。

  • 株式会社コルラボ

株式会社コルラボは大学発ベンチャーで、農工大・多摩小金井ベンチャーポートと横浜市内の2か所に拠点を持ちます。3つの情報(動作解析、環境センシング、生体センシング)を多変量解析によって統合し情動を推測する「Bouquet法」がコア技術です。この技術は例えば、オフィスワーカーが疲れているのか・緊張しているのかなどの生体計測情報を把握し、適正な身体状態へ誘導するオフィス環境制御等に活用が可能です。

動作解析(Bouquet法)の開発が進んだいま利用者のホリステック(精神・身体・環境が調和している)な健康に寄与するサービス・健康改善モニタリング等に関心のある企業との共創を希望しています。

個別相談会

 プログラム終了後には、登壇者と密なコミュニケーションが取れる個別相談会を実施しました。「協業先の探索を手伝ってほしい」「農工大・多摩小金井ベンチャーポートに入居している企業を紹介してほしい」「この研修シーズは○○に使えるのでは」など、ネクストアクションにつながる会話が多数生まれるような意見交換が行われました。

 昨年に引き続き産学連携をテーマにしたイベントを開催しましたが、多くの方の申込・参加をいただき、産学連携の機運の高まりを実感しました。

 今後もコミュニティ会員向けにイベントを開催していきますので、ご関心のある方は是非ご入会ください!

コミュニティの入会概要と申し込みページ
https://tama-innovation-ecosystem.jp/community/
 
コミュニティで今後予定しているイベント
https://tama-innovation-ecosystem.jp/event/

当コミュニティの詳細や最新のイベント情報は
下記ページよりご確認ください