道路に敷いた太陽光発電パネルでカーボンニュートラルに貢献 | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
道路に敷いた太陽光発電パネルでカーボンニュートラルに貢献

道路に敷いた太陽光発電パネルでカーボンニュートラルに貢献

MIRAI-LABO株式会社 常務取締役 平塚 雷太

本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。
このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

昨今「カーボンニュートラル」への関心が高まる中、注目を集めているのが、道路や路面に敷く太陽光発電パネルです。開発を進めているのは八王子市に本社を置くMIRAI-LABO(ミライラボ)株式会社です。平塚雷太常務に、太陽光路面発電パネルを軸に据えた今後の成長戦略などについて聞きました。

100年後を見据えた地球環境創り

太陽光路面発電パネルの開発には、どういった形で取り組んできたのでしょうか

平塚:欧州や米国とは異なり、日本はこの領域での国家プロジェクトが存在しません。我々は、「100年後を見据えた地球環境創りに貢献します」という当社の企業理念を踏まえ、「路面の有効活用による再生可能エネルギーの普及を推進することで、太陽光発電パネル設置のために森林を伐採することなく新たなエネルギーインフラを構築できるのでは」といった考えに基づき、独自で技術を検証しデータを蓄えていました。そして、4年前に道路舗装大手の株式会社NIPPOから打診があり、太陽光路面発電パネル「Solar Mobiway(ソーラーモビウェイ)」を組み込んだ道路舗装の開発につながりました。

道路に貼れる柔軟で頑丈なパネルを開発 

パネルにはどういった特徴があるのでしょう

平塚:海外の太陽光発電事業者は、屋根に搭載されたパネルを道路に転用するという観点から、固く頑丈な構造のパネルを開発しています。これに対して当社では、最初の段階から「どうやって道路に貼れるか」といった観点からの研究を進め、柔軟で頑丈なパネルを開発しました。大きな振動が生じたり、暑さで道路が変形したりしても、壊れることなく性能を発揮します。車のスリップなどを防ぐため、パネルの表面はセラミック片を混ぜた樹脂で覆われています。また、その効果によって太陽光が当たる角度を問わず、効率よく光を収集することができます。

電力の〝地産地消〟を実現した時間貸し駐車場

本格普及に向け、外部との連携にも拍車がかかっています

平塚:東京建物グループの日本パーキング株式会社とは、駐車場の通路にパネルを敷設し、発電した電力で精算機や照明など敷地内で必要な電力を〝地産地消〟で賄う時間貸し駐車場の展開で、資本業務提携しました。
センコーグループホールディングスとは、提携によって同社の物流センターに太陽光路面発電を導入し、CO2を排出しない物流センターの展開を目指します。

無電力地域でも自然を守りながら新しい形のエネルギーインフラを整備

一連の取組を通じ、どういった世界を目指していますか

平塚:「AIR(Autonomous Intelligent Road)」という自律型知的道路の構築です。AIRとは「太陽光路面発電パネルによる分散発電」と、「電気自動車(EV)の使用済みバッテリーのリユースによる分散蓄電」を組み合わせることによって、周辺部のセンサーや通信、照明などに自律した電力を供給する、新たなエネルギーインフラサービスの総称です。東日本大震災で大きな被害を受けた福島県浪江町には、自律型ソーラー街路灯が設置されています。AIRが本格的に普及すれば、国全体のCO2排出量を削減でき、無電力地域や過疎化が進んでいるエリアで、「自然を守りながら」という新しい形のインフラを整備することもできます。

多摩地域は規模が大きい拠点を開設しやすい

企業経営を行う上での多摩地域の魅力はどんなところでしょうか

平塚:社長の生家は八王子で、多摩地域発の事業や雇用の創出といった地域貢献の観点からも八王子に本社を置いています。これまでは地域連携が十分ではなかったですが、研究開発体制を大きくし、ある程度の規模感を備えた拠点にしようとした時、区部と比べて広い土地を確保しやすい多摩地域は有効だと思っています。

二世経営者同士の付き合いで発注先拡大

地元企業との連携は進んでいますか

平塚:当社も中小・ベンチャーという領域なので、普段からものづくり企業との接点がないため周辺の町工場とは関係づくりが難しく、ほとんど取引はしていませんでした。ただ、当社は着実に成長しており、自社内で設計や開発、試作をきちんと行える体制を構築しつつあります。「こういった強みがある工場には、これを頼もう」といったコントロールが自社の中でできるようになれば、市内の業者との連携が進むだろうと実感しています。

平塚常務は二代目ですが、二世経営者同士のお付き合いはどのような形で行われていますか

平塚:多摩地域はものづくり系の会社が多いですが、そうした会社はホームページがなかったりしてつながることが難しいのが実態です。ただ、自治体や地元の金融機関が主催する二世経営者塾みたいなコミュニティに入ると、「どういったものを生産しているのか」などが分かるようになり、ものづくりのコミュニティが広がります。事実、私が2つの二世経営者塾を卒業してから、当社の発注先も市内の業者が増えてきています。

地元・多摩地域での開発体制を強化

今後の成長戦略を改めてお聞かせください

平塚:従業員の数も、昨年の倍以上に相当する40人強まで増えています。路面発電は道路を活用したインフラ事業で、人材補強を加速させながら開発・実証検証の体制を、より強固なものとしたいと考えていますので、近隣エリアで拠点を拡大することを考えています。また、八王子を中心とした多摩地域で連携できる企業を増やしていきたいですね。

【プロフィール】
平塚 雷太(ひらつか・らいた)
常務取締役
1989年12月生まれ。東京都八王子市出身

会社情報

会社名 MIRAI-LABO株式会社
設立 2006年4月
本社所在地 〒193-0835 東京都八王子市千人町3-3-20
ウェブサイト https://mirai-lab.com/
事業内容 非常用電源や省エネ機器などの環境技術・製品の開発を手掛けており、主力は道路面に舗装材として設置できる太陽光路面発電パネルと中古EVから排出された。ここ数年は外部企業との連携に力を入れており、オークネット、ENEOSホールディングス、やまびこ、センコーホールディングス、東京センチュリー、日本パーキングとの間で資本業務提携契約を締結している。創業以来、環境をコンセプトに研究開発を行ってきたMIRAI-LABOの技術力をコアに、連携企業と共に利益創出と社会的波及を目的とした環境プラットフォームを構築している。

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