創業34年。日本のドキュメント作成業務を支えるXML/SGMLのスペシャリスト
ネクストソリューション株式会社
代表取締役社長 依岡 正明
本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。
ネクストソリューション株式会社は、情報処理システムやソフトウェアの開発・販売・保守、および関連サービスを提供しています。特に、XML/SGML技術を活用したドキュメントソリューションに注力し、約款・契約書作成支援システムや添付文書作成管理システム、自動組版システム、XML編集プログラムなどを手掛けています。創業者の依岡正明・代表取締役に、事業内容とこれまでの歩みについてお話を伺いました。
働きながら電気通信大学に通う
- 依岡様のこれまでの歩みについてご紹介ください。
依岡:私は1948年7月生まれで、現在76歳です。いわゆる団塊の世代です。2年浪人生活して今度こそと挑んだ大学受験の年に、東京大学の安田講堂を全学連が占拠する騒動が起きて、入学試験の大半が中止になったんです。私は兄弟4人の長男で下も控えていたので、志望していた大学受験は断念し、東京電子計算機専門学校に入ってコンピューターを学びながら様子を見ることにしました。コンピューターに興味があり入学し、やってみると想像以上に面白く、秋には専門学校の経営母体が入社試験をやるという。とりあえず受けてみると内定が取れたので、プログラマーを目指し就職することに決めました。その後に職場から電気通信大学に通えるとわかり、後先考えずに受験したら受かったので、働きながら電気通信大学短期大学部の電子工学科(夜間)に通いました。最初は定時で帰れて授業も遅刻せず受けられたのですが、2年目、3年目となると状況が変わり残業や客先での泊まり込み、出張などが増えてきて、「これは失敗したかな」と思いました。それでも何とか続けて、2年留年したものの1975年に卒業しました。その後、9年半勤めた職場で一時期お世話になった先輩に誘われ、マイクロコンピュータをヨーロッパに輸出する会社に転職しました。しかし、会社が1年で倒産してしまい、取引先だった伊藤忠商事の関連会社に声をかけてもらい、そちらに入社することになりました。
41歳で起業。創業初年度のピンチを乗り越える
- そこからどのような経緯で起業に至ったのでしょうか。
依岡:新しい職場では、パソコン用のプリンターの開発に携わりました。当時、成長著しいアップル社のマッキントッシュに接続するプリンターを開発するなど、私が入社した1981年から1985年までは非常に順調でした。しかし1985年9月、プラザ合意が締結され、その後は急激な円高が始まり、それまで1ドル240円だったものが、1ドル100円に向かって円高が進んで行きました。輸出が売上の9割以上でしたので、社内はパニック状態になりました。最終的に私が所属していた企画開発部は分社化することになり、それを機に退職して、現在のネクストソリューション株式会社を創業しました。41歳でした。振り返ってみると、初年度が一番大変だった気がします。資本金として1,500万円を用意し、さらに銀行から1,000万円借りたのですが、半年後には赤字が1,800万円を超え、このままでは1年もたない、と不安で一睡もできないまま朝を迎えた日を今でも鮮明に覚えています。そんな中で期末には開発していたOEM製品が売上に寄与、1,200万円の赤字決算でしたがなんとか初年度を乗り切りました。2年目からは受託開発を中心に売上が立つようになり黒字化できました。厳しかったですが、ここからがスタートでした。
特許庁のドキュメントソリューションを手がける
- 御社の主力事業である、XML/SGML(※1)を活用したドキュメントソリューションの事業はいつから始めたのでしょうか。
依岡:1996年頃からです。その頃に作ったプロトタイプがNTTデータの目にとまり、1998年に『自動組版プログラムDSSSLprint』を納品しました。その後の入札を経て製品は2000年1月から特許庁の情報システムに使われ、業務効率化と文書管理の高度化に貢献しました。これがきっかけで、SGMLの分野は将来性があると分かりましたね。ちなみに、SGMLは国際規格で、XMLはそのサブセット(一部)。SGMLよりインターネットに適していて、理解しやすいのが特徴です。今はXMLが主流になっています。
※1. SGML (Standard Generalized Markup Language) は、文書やデータの構造を定義するためのメタ言語。1986年にISO(国際標準化機構)によって標準化された規格で、HTMLやXMLの基盤となっている。技術文書、マニュアル、規格書などの長大な文書を効率的に管理が可能。XML (eXtensible Markup Language) は、データを記録・交換するための柔軟なマークアップ言語。主に構造化されたデータを表現するために使用され、プラットフォームやプログラムに依存せずにデータのやり取りができる。
医療分野の添付文書や約款作成に欠かせないツール
- XMLやSGMLを用いた御社のサービスは、特許文書の他にどのような場面で使われているのでしょうか。
依岡:医療用医薬品、医療機器、診断薬などです。この分野では、添付文書の作成が薬事法で義務付けられています。ところが、この添付文書は一度作れば終わりではないんです。新たな副作用や相互作用、不具合が判明したり、法律が変わったり、その都度改訂が必要になります。弊社の医薬品・医療機器添付文書作成管理システム『PMDOC X』は、そうした改訂の手間やミスの削減に貢献するシステムです。
他には、約款(※2)や契約書の作成を支援する『NEXTDarwin』も手掛けています。約款には目的に応じていろいろな条項が並んでいますよね。「第○章の〜を参照」など、あちこちに出てきます。で、例えばある条項を削除するとなると、番号がズレてしまいます。しかし、このツールを使えば、それを自動で付け直してくれる。また、古い約款と新しい約款を比較して、どこが変わったのかをチェックしたいこともありますよね。このツールなら瞬時に比較できて、変更点が一目でわかります。だから、チェックしたり承認したりする人にとっても、すごく便利なツールなんです。サービス毎に約款があり、また商品改定の都度修正が必要な生保・損保業界で主に取り入れていただいています。
※2.約款とは、契約の条件や取り決めをまとめた標準的な文書で、保険や通信サービスなどで広く用いられます。契約者全員が同じ条件で契約するための基準となる文書で、個別に交渉する手間を省きます。
電通大の研究室と連携しテレビ局向けサービスを開発
- 御社は電気通信大学のUECアライアンスセンターで事業をされていますが、電気通信大学とのかかわりはありますか?
依岡:電気通信大学の産学連携推進室の紹介で、岡本一志教授の研究室と『テレビ局向けスポットCM自動作案ソリューション』を開発しました。テレビ局では、広告会社から「このくらい視聴率を確保したい」という依頼を受けるんです。この視聴率の合計を示す指標がGRP(Gross Rating Point)です。「これだけのGRPを確保したい」という要望に応じて、どの時間帯・どの番組にCMを割り付けるかを決める必要があります。ところが、これが相当な作業量になる。あるテレビ局によると、1日の広告枠は15秒単位で約700枠。ひと月にすると2万枠以上にもなります。この膨大な広告枠に、広告会社からの依頼を基にCMを割り付ける作業を「作案業務」と言います。この作業を人間が担当しているわけですが、作業の8割は単純作業で、2割が頭を使う部分らしいんですね。だったら、この8割を自動化してしまえば、残りの2割に集中できて、全体の負担が大幅に減ります。実はこの話、大阪のテレビ局に勤めている息子から相談を受けたところから始まったんです。岡本研究室の学生が手伝ってくれて、1年ほどかけてPoC(Proof of Concept)を作り実証実験を行いました。今後はこれを「営放システム」を取り扱う企業に売り込んでいきたいですね。
山あり谷ありの34年。夢は国防に関するドキュメント制作
- 今年で創業34年だそうですが、これまでの経営人生を振り返り思うことはありますか? また今後の事業の展望もお聞かせください。
依岡:創業当初は非常に厳しい状況でしたが、そこから15年間は右肩上がりで成長を続けてきました。しかし、その後の15年は試練の連続で、特許庁の案件を失注するなどして、弊社も大きな負債を抱えることになりました。その後、再び特許庁の案件に採用されたのは2013年のことで、実に7年もの時間を要しました。経営が安定してきたのはここ4年ほどです。山あり谷ありの34年。経営というのは本当に一筋縄ではいきませんね。
今後の展望としては、まず、約款・契約書作成支援システム『NEXTDarwin』を生保・損保業界にとどまらず、投資信託会社にも広く販売していきたいと考えています。また、以前から取り組みたいと思っていた国防関連のドキュメント制作にもいつか挑戦してみたいです。もともとSGMLは、アメリカ国防総省などが特定メーカーに依存しない文書標準として開発したものです。最終的には、私自身も国防に関するドキュメント制作に携わることが夢です。
会社情報
会社名 | ネクストソリューション株式会社 |
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設立 | 1990年4月 |
本社所在地 | 東京都調布市小島町1-1-1 UEC アライアンスセンター 313 |
ウェブサイト | https://www.nextsolution.co.jp/ |
事業内容 | 情報処理システム及びソフトウェアの開発、販売、保守、関連するサービスの提供:XML/SGMLを活用したドキュメントソリューション(約款・契約書作成支援システム/添付文書作成管理システム/自動組版システム、XML編集プログラム)、印刷ソリューション(プリンターエミュレーター) |