社会課題・地域課題の解決に向けたイノベーションの必要性・効果を発信するため、自治体やスタートアップ企業の先進的な取組事例を紹介する交流イベント「地域×イノベーション ~行政・スタートアップの取組から~」を2023年9月8日(金)に東京たま未来メッセ(八王子市)にて開催しました。
今回は、全国でもイノベーション推進の先進的な取組を実施している愛知県と広島県、そして、多摩地域で社会課題の解決に挑戦している株式会社イノフィスとエアロセンス株式会社にご講演いただきました。
当日は台風が通過するあいにくの天気でしたが、多摩地域内外の中小企業やスタートアップ、大企業、大学・研究機関など、会場及びリモートあわせて120名を超える方々にご参加・ご視聴いただきました。 この報告では、当日のイベントの様子をご紹介します。
【第1部】行政と取り組むイノベーションの創出
「愛知発イノベーション創出に向けた取組」
愛知県 経済産業局 経済産業推進監 柴山 政明氏
柴山氏の講演では、「Aichi-Startup戦略」の根幹を担う地域のスタートアップ支援拠点「STATION Aiプロジェクト」(2024年10月開業予定)や、ディープテック系スタートアップ・学生に向けた支援施策等についてご説明いただきました。
特に「STATION Aiプロジェクト」については、今後の愛知県におけるイノベーション創出を牽引していく重要拠点が備える機能として、ビル全体がスタートアップのサンドボックスとなっている点や、フロア間の垣根を可能な限り無くして入居者同士の情報交換やイノベーション創出の活性化を図ろうとしている点、誰もが訪問可能でイノベーションをより身近なものと感じられる空間を目指している点などについてご紹介いただきました。
「『ひろしまサンドボックス』をはじめとするイノベーション創出の取組」
広島県 商工労働局イノベーション推進チーム 地域産業デジタル化推進グループ 主任 片岡 達也氏
片岡氏の講演では、広島県の魅力や特徴について観光や産業など様々な観点からご紹介いただくとともに、2022年からの10年間でユニコーン企業10社の創出を目標とする「ユニコーン10プロジェクト」や、2018年から広島県全体を実証フィールドとして様々な実証実験を行える環境とした「ひろしまサンドボックス」の取組についてお話しいただきました。
特に「ひろしまサンドボックス」の取組では、自由提案型のオリジナルサンドボックス、県庁の課題に対して実証実験を通じた解決に取組む行政提案型サンドボックス、シード期のスタートアップを中心としたアクセラレーションプログラム「D-EGGS PROJECT」、2022年からは実証実験だけでなく実装フェーズの支援にも取り組んでいる点などについてご紹介いただきました。
トークセッション
愛知県 経済産業局 経済産業推進監 柴山 政明氏
広島県 商工労働局イノベーション推進チーム 地域産業デジタル化推進グループ 主任 片岡 達也氏
ファシリテーター:事務局 伊藤 シオン
トークセッションでは、「行政がイノベーション、スタートアップ創出に取り組む背景」についてお伺いしたところ、柴山氏からは「世界のスタートアップ戦略を分析すると、取組主体が“大学中心”、“企業中心”、“行政中心”の3つに分かれていて、その中で行政中心の取組が最も成功確率が高いという文献を見つけた。なので、愛知県が取り組むことになった」、片岡氏からは「広島県はものづくりだけでは立ち行かなくなる懸念があり、ものづくりのバリューアップと共に新しい産業の創出が必要との考えからスタートした。知事の“広島県は倒産しないから、いざという時のリスクは県が負う”との言葉が後押しとなって、意思決定が行われた」とのお話がありました。
また、「多摩地域の取組」についてお伺いしたところ、柴山氏からは「多摩地域と愛知県の産業構造は全く同じと思っており、我々はトライアンドエラーで学習したことを共有して、日本のものづくり、スタートアップ、企業を盛り上げていきたいと思っている。STATIO Aiにもぜひ参加をして欲しい」、片岡氏からは本事業の多摩イノベーションコミュニティを例に挙げ、「ぜひこういった楽しいコミュニティに参加いただきたい。そして、全部自分でやろうとせず、ローカルマッチングを目指すことが重要。ぜひ広島にも来ていただき、連携ができたら嬉しい」とのメッセージをいただきました。
「マッスルスーツによる倉庫・配送業務における業務負荷軽減」
株式会社イノフィス 依田 大氏
依田氏の講演では、イノフィス社の主力製品であるマッスルスーツについて、製品開発の出発点や現在活用が広がりつつある業界(製造・物流・建設・介護・農業等)、少子高齢化社会における有望性などについてご紹介いただきました。イノフィス社のマッスルスーツは、国内アシストスーツ市場において約63%のシェアを有するとともに、日本を含む18の国と地域で販売され、今後も海外での普及活動にも注力するとのお話をいただきました。
また、今後のビジョンとして「物流・モビリティ」分野における社会課題について、課題の解決策や「リーディングプロジェクト」の取組として、多摩地域内の工場における取組内容についてもご紹介いただきました。
「広域・長距離飛行が可能なドローンを活用したスマート林業」
エアロセンス株式会社 嶋田 悟氏
嶋田氏の講演では、エアロセンス社の社会課題に対する取組、その取組を支えるコアコンピタンスや各種ソリューション、ドローン新時代の幕開けともいわれるVTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft)等についてご紹介をいただきました。また、ドローンを活用した社会課題解決の事例として、マレーシアでのマングローブ保全活動や、「リーディングプロジェクト」の取組としてレーザースキャナーを用いた広範囲測量の効率化=スマート林業についてもお話いただきました。
また、今後の展望として「次世代大型VTOL」の開発に取り組むとともに、島しょ部における事業実現可能性についても検討をされており、「必要な物が必要な時に必要な場所で必要な人へ、当たり前に届く世界」の実現に向けて邁進されていくとのビジョンについてもお話をいただきました。
トークセッション
株式会社イノフィス 依田 大氏
エアロセンス株式会社 嶋田 悟氏
ファシリテーター:事務局 森本 陽介
トークセッションでは、「ビジネスとして社会課題に着目された背景」についてお伺いしたところ、依田氏からは「少子高齢化が引き起こす社会課題に取組むことは社会的意義、やりがいがあると思っている。元々イノフィスは介護業界向けに製品開発を行ったことがきっかけとなっており、彼らの健康的な中長期キャリア形成をサポートできることにやりがいを感じている」、嶋田氏からは「シンプルに人の役に立ちたい。目の前にいる人の役に社会課題の現場にいる方々と向き合ってビジネスを進めていく上で意識されていることや難しいこと」についてお伺いすると、依田氏からは「製品開発の際にお客様のお困りごとやニーズをしっかりとヒアリングすることが重要。一方で、技術面や価格面で実現が難しいものもあり、日々試行錯誤しながら製品開発に取り組んでいる」、嶋田氏からは「ドローンで実施することの多くはデータ取得なので、発注者が取得データを成果として認めない限りそのデータを使うことは出来ない。そのため、発注者が仕様書の中に目視確認ではなく、データ取得を成果として認める記載をしていることが重要だと考えている」とのお話をいただきました。
【交流会】
プログラム開催後には、参加者同士の交流を深めることを目的に、スタンディング形式で交流会を開催しました。多摩地域の銘菓や飲み物を楽しみながら、自由に交流が行われました。
【参加者の声】
「起業家それぞれの立場からお話を伺えたことは貴重な経験となりました。行政の方が“まずやってみよう”というチャレンジ精神で支援をされている姿が特に印象的でした。」
「エコシステム、オープンイノベーションについて多摩地域での最新情報を得ることができました。同じエリアにある組織として地域で何ができるかを考える機会となりました。」
「官民連携に先進的に取り組んでいる自治体の政策・仕組みや、連携の好事例を知ることができ、“官民連携による社会課題解決”により大きな可能性を感じました。」
多摩イノベーションコミュニティでは、多摩地域内外の多様な主体による交流や連携などに向けて、会員向けワークショップや公開イベントを予定しています。ぜひ下記よりコミュニティへのご入会をお待ちしています。
多摩イノベーションコミュニティでは、多摩地域内外の多様な主体による交流や連携などに向けて、会員向けワークショップや公開イベントを予定しています。ぜひ下記よりコミュニティへのご入会をお待ちしています。
コミュニティの入会概要と申し込みページ
https://tama-innovation-ecosystem.jp/community/
コミュニティで今後予定しているイベント
https://tama-innovation-ecosystem.jp/event/