企業間連携の意義・効果を発信するため、大企業、中小企業、スタートアップそれぞれが行う他主体との協働・協創事例を紹介する交流イベント「地域課題からはじまる協働・協創によるイノベーション」を2024年9月20日(金)に東京たま未来メッセ(八王子市)にて開催しました。
今回は、東日本旅客鉄道株式会社より、大企業の視点から他主体との協働・協創事例を複数ご紹介いただくとともに、株式会社中村工業および株式会社CogSmartより、中小企業・スタートアップそれぞれの視点から多摩地域での他主体との協働・協創事例についてご講演いただきました。
当日は、120名を超える多摩地域内外の中小企業やスタートアップ、大企業、大学・研究機関の皆様が、現地およびオンライン形式でご参加・ご視聴されました。 この報告では、当日のイベントの様子をご紹介いたします。
【第1部】地域課題解決に向けた大企業の協働・協創事例
「沿線からはじまる地域イノベーション ~東京多摩から地方創生モデルを~」
東日本旅客鉄道株式会社 八王子支社 地域共創部 マネージャー 兼 沿線まるごと株式会社 取締役 会田 均氏
会田氏の講演では、東日本旅客鉄道株式会社が取り組むイノベーション活動や協業モデル、ミッシングピースや、奥多摩地域を舞台に、沿線をまるごとひとつのホテルに見立てて地域の活性化を目指す「沿線まるごとプロジェクト」についてご説明いただきました。
特に「沿線まるごとプロジェクト」については、地域と連携しながら地域課題解決に結びつくコンテンツ開発や実証を積み重ねてきたこれまでの軌跡や、自治体・地域事業者・地域住民との協業実績地域、奥多摩エリアでのツーリズムを先進事例として「TOKYOから地方創生モデルを目指す」という今後の展望などについてご紹介いただきました。
トークセッション
東日本旅客鉄道株式会社 八王子支社 地域共創部 マネージャー 兼 沿線まるごと株式会社 取締役 会田 均氏
株式会社グッドステップス 代表 巽 奈緒子氏
ファシリテーター:事務局 伊藤 シオン
株式会社グッドステップス 代表 巽 奈緒子氏
トークセッションでは、「他社と連携するメリットや工夫点」についてお伺いしたところ、会田氏から「大企業とは異なる視点から地域の本質を考え、体現している巽氏と連携することにより、奥多摩地域の本質に関する共通認識がプロジェクトチームや地域住民の中に生まれ、地域の魅力をありのままに伝えることができるようになった」、巽氏から「地域住民全員の希望を取り入れることはとても難しいが、東日本旅客鉄道株式会社の経験則や地域住民の意見を最大限汲み取るように努め、“どのような魅力を伝えたいのか、そのために誰の何が必要であるか”を綿密に議論するよう工夫していた」とのお話がありました。
また、「地方創生に関する将来的な展望」についてお伺いしたところ、会田氏から「自社技術をどのようにして社会課題に活かせるのかを積極的に発信していくことで、新たな連携が生まれる。企業規模関係なく、連携・協働を通して技術を顧客価値に転換し、地域の良さを最大限引き出して地域活性化を実現したい」、巽氏から「地方創生や地域活性化のプロジェクトに関わる際、“自然や環境との関わり方”を大切にしている。地域に住む人々の営みが“自然”と融合できることを目指して今後も活動していきたい」とのメッセージをいただきました。
【第2部】中小企業・スタートアップによる多摩地域での協働・協創事例
「木材の長寿命化を図る加工技術を活用した間伐材・倒木の地産地消モデル」
株式会社中村工業 中村 英樹氏
中村氏の講演では、ご自身の困りごとから発想を得て、長年の試行錯誤の結果開発した「腐らない木;R.P.Lumber」についてご説明いただき、この加工技術を活用し、地域産伐採木を加工し地域に戻すという木材の地産地消モデルを、一般社団法人kitokitoと連携し、令和6年度リーディングプロジェクトで検証するとご紹介いただきました。
また、地域課題解決に関して、社会の困りごとをチャンスと捉え、他社との協働・協創、すなわちイノベーションを通して課題を解決することが重要であるとのお話をいただきました。
トークセッション
株式会社中村工業 中村 英樹氏
一般社団法人kitokito 代表理事 野口 省子氏
ファシリテーター:事務局 小野 将太
トークセッションでは、「連携に至った経緯」についてお伺いしたところ、中村氏からは「自分が考えていることや困りごと、将来像について意見交換をする中で、“人のため、社会のため”に何かに取り組みたいという考え方が共通していると感じ、連携に至った」、野口氏からは「福祉作業所で制作した木製品を用いて、森林伐採に関する正しい知識や資源循環のあり方を伝えるなどの木育活動を実施している。こうした取組を中村氏に話したところ、深く共感いただき、より強固な連携に至った」とのお話がありました。
また、「今後の展望」についてお伺いしたところ、中村氏から「自分が抱える困りごとを積極的に外部へ発信することがとても重要である。地域活動やイベントでの交流などを通して自分自身も情報発信をするとともに、様々な方とコミュニケーションをとり連携していきたい」とのメッセージをいただきました。
「どのように予防サービスを健康無関心層にまで広げるか?認知症早期予防をテーマに三鷹市での挑戦」
株式会社CogSmart 樋口 彰氏
樋口氏の講演では、認知症やフレイルといった社会課題解決に向けて、健康無関心層を含めた行動変容アプローチについてご説明いただき、脳の健康チェックを入口とした行動変容による認知症予防モデルを、NTTコミュニケーションズ株式会社、三鷹市福祉Laboどんぐり山、野村不動産ライフ&スポーツ株式会社と連携し、令和6年度リーディングプロジェクトで検証するとご紹介いただきました。
また、今後の展望として、令和6年度の三鷹市での実証を皮切りに、市民・自治体・事業者が三方良しとなるような持続可能モデルの確立を目指していくとのお話をいただきました。
トークセッション
株式会社CogSmart 樋口 彰氏
NTTコミュニケーションズ株式会社 ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートヘルスケア推進室 室長 久野 誠史氏
三鷹市福祉Laboどんぐり山 所長補佐 三鷹市在宅医療・介護研究センター センター長 前田裕章氏
ファシリテーター:事務局 松下 真央
トークセッションでは、「株式会社CogSmartとの連携に至った経緯」についてお伺いしたところ、久野氏からは「NTTコミュニケーションズ社が提供する脳の健康チェックサービスは、認知症を発見することはできるが治療やケアを行うことは難しい。認知症という社会課題を解決する中で、認知症の予防改善に向けたソリューションを持っているCogSmart社と連携することで、認知症発見にとどまらない一体的なサービス提供・社会課題解決を実現できると考えて連携に至った」、前田氏からは「認知症課題は三鷹市を含む自治体としても関心の大きいテーマである。行動変容を通して運動習慣を身に着けることは一般的に難しいテーマであるため、課題解決に向けてぜひ連携したいと思った」とのお話がありました。
また、「今後の展望」についてお伺いしたところ、樋口氏からは「小さなスタートアップであるため、全国規模かつ誰でも利用しやすい電話を主としたサービスを有するNTTコミュニケーションズ社、地域の実情を深く理解している三鷹市福祉Laboどんぐり山と連携することで、1社では実現が難しい社会課題解決に一歩近づくことができる。本年度の実証を皮切りに、まずは三鷹から多摩地域全体へ、そして将来的には全国に認知症予防サービスを展開したい」、久野氏からは「認知症予防は様々な自治体からニーズがある。本実証が優良モデルケースとなるよう三鷹市での実証を成功させたい。そして、認知症予防において全国のインフラになることを目指す」、前田氏からは「まずは本年度のプロジェクトを成功させたい。今回の取組が良い先行事例となるとともに、三鷹市や多摩地域に成果を還元できる好循環を生み出せればと思っている」とのメッセージをいただきました。
交流会
プログラム開催後には、参加者同士の交流を深めることを目的に、スタンディング形式で交流会を開催しました。
多摩地域の銘菓や飲み物を楽しみながら、自由に交流が行われました。
参加者の声
「スタートアップや大企業、行政など様々な視点でのお話を伺うことができ、学びの多いイベントでした。地域の課題解決に向けて自分に何ができるか、あらためて考えてみたいと思いました。」
「交流会で登壇者や参加者の方々とコミュニケーションをとることができ、他社との連携や協働・協創に向けて取り組みたいという気持ちが強くなりました。」
「多摩地域におけるオープンイノベーション事例やリーディングプロジェクトの検証内容について理解を深めることができました。
多摩イノベーションコミュニティでは、多摩地域内外の多様な主体による交流や連携などに向けて、会員向けワークショップや公開イベントを予定しています。
ぜひ下記よりコミュニティへのご入会をお待ちしています。
コミュニティの入会概要と申し込みページ
https://tama-innovation-ecosystem.jp/community/
コミュニティで今後予定しているイベント
https://tama-innovation-ecosystem.jp/event/