本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。
東久留米市に本社を構える株式会社ハイメックスは、コンバーティング装置の部品製造というニッチな業界で成長を続けている企業です。国内の企業だけでなく海外にも顧客を抱えるハイメックス社は、『令和の内職』と銘打って、地域の雇用創出と中小企業の活性化にも取り組んでいます。代表取締役の中島俊英氏に、製造業における中小企業の生き残り戦略や、同社の事業に懸ける思いについて話を聞きました。
“ロールtoロール”で新たな価値を付加するコンバーティング装置
- コンバーティング装置とはどのような製品なのでしょうか。
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中島:コンバーティング装置とは、ロール状に巻かれた紙やフィルムを回転させながら、もう一つのロールに巻き取っていく工程の中で、印刷したりコーティングしたり、ラミネートをして付加価値をつけていく作業を行う装置です。この製造方法は、“ロールtoロール”と呼ばれ、大量生産に向いています。我々は、このコンバーティング装置の部品を作っているメーカーです。巻き取る素材には紙や不織布、アルミ箔など様々な種類がありますが、中でもプラスチックフィルムに特化してきました。例えばポテトチップスの袋とか、レトルト食品のパッケージ、ペットボトルの外装などは、全てプラスチックフィルムで作られています。また、ジャンルは違いますが、最近の流行りで言うと、リチウム電池の製造にも使われています。
液晶ブームとリチウム電池で業績を伸ばす
- 会社が成長してきた要因は何だと思われますか。
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中島:父がハイメックスを創業した当時は、軽さと精密さを売りに市場に製品を出していたのですが、たまたま、我々の製品のメカニズムがクリーンルーム環境で使うことに適しているということがわかり、この特性が時代とマッチして売り上げを拡大していきました。というのも、2000年前後に液晶テレビなどディスプレイ業界が伸びたことに伴い、工学系フィルムの需要が高まり、同時にクリーンルーム環境下で使える我々の製品が注目されるようになったのです。その結果、国内だけでなく、台湾や中国、韓国など海外でも購入していただくようになりました。その後、液晶ブームは落ち着きましたが、今はリチウム電池が伸びてきたことに伴い、業績も年を追うごとに伸びてきています。
中小企業は連携して海外に進出していくべき
- 業界のトレンドが移ろう中で、今後、どうやって事業を発展させていこうと考えていますか。
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中島:「グローバル時代に、製造業の中小企業が活躍するにはどうすべきか」というテーマを長年、考え続けてきました。それを解決するヒントは“アライアンス(連携)”にあると思っています。日本の機械を海外に販売する場合、どうしても売りっぱなしになってしまい、メンテナンスや修理などのサポートまでは手がまわりません。大企業はできるかもしれませんが、中小企業の体力では難しいのが現状です。そこで、コンバーティング業界の中小企業が連携して海外に出ていければいいのではないかと考えています。まだ、なかなかうまくいってはいないのですが、例えばヨーロッパでは、規模が小さくても積極的にグローバル展開している企業が数多くある現状を見ると、我々だってやれないことはありません。
グローバルで戦う上で、越えなければならないこととは
- 中小企業が連携して海外進出を目指す上での課題は何でしょうか。
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中島:現実問題として、製造業の中小企業が海外に進出しようと考えても、言葉の問題が足かせになって躊躇する企業が多いと思います。かといって、代理店や商社と連携しようとしても、規模が小さいから扱ってもらえない。中小企業も自力で海外に出ていく力をつけなければいけません。我々はグローバルで活躍できる人材として、台湾出身のエリンさんに加わってもらっています。彼女には日本と台湾、世界をつなぐ存在として頑張ってほしい。期待しています。
働きたい人を製造業の現場とつなぐ『令和の内職』
- 昨年、『令和の内職』が本事業のリーディングプロジェクトに採用されました。
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中島:『令和の内職』は、人手の足りない多摩地域の中小企業と、フルタイムで働けない地域の人をつなぐ取組です。もともと、製造業では、製品を作る過程にいろいろな単純作業を含んでいます。しかし、正社員が単純作業をやると、製造コストが上がり採算が取れなくなってしまいます。我々も創業当時は多摩地域のシルバー人材センターの方に、図面を書く作業を担っていただいていました。一方で、「子育ての合間に短時間だけ働きたい」という主婦の方や、健康上の理由で長時間は働けない方なども一定数いらっしゃいます。そういった方々と製造業の現場とをうまくつなげる仕組みを作るのが狙いです。現在は、多摩地域の障がい者支援施設と連携して事業を進めています。障がい者支援施設には1日のうち数時間しか働くことのできない方がいます。「彼らの受け皿になれる企業が少ない」と東久留米市商工会から相談があり、我々がモデルケースになろうと手を挙げました。
業務に潜む、単純作業を切り出す難しさ
- 『令和の内職』を進める上での課題はありますか。
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中島:まずは社内の単純作業を切り出していくところから始めるのですが、これが意外と難しい。ずっとハイメックスの代表を務めてきた私でも、うまく切り出せないんです。そもそも、単純そうに見える作業でも、在庫、納期、手配など、実はいろいろな要素がつながっています。そのため、全てのプロセスを整理してから切り出さないと、どこかに歪みが生まれてしまいます。業務のIT化を進める際に生じる問題と似ていますね。前後の工程をどう受け渡しするのか、単純だと思っていたけど本当はその裏にはいろいろなことがつながっていた、といった問題が後々になって表面化してくるのです。
口頭ベースの業務を明文化し、マニュアルを作る
- 単純作業をうまく切り出すためには何が必要ですか。
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中島:まだ我々もしっかりと確立できていないのですが、マニュアル化して、誰もが共有できるようにすることが必要です。日々の業務の中には口頭ベースで処理されている作業があります。そのため、「Aさんはこう言っていたけど、Bさんはこうやっている」というように、定型化していないことがたくさんあるんです。それらのプロセスを整理して明文化することで、はじめて業務の切り出しが可能になります。また、真面目な方ほど、単純作業であるか否かに関わらず、目の前にやらなければならないことがあれば、「私がやらなきゃ」と思ってやってくれます。しかし、本当は時間を割くべき仕事が他にあるかもしれない。単純作業をアウトソーシングできれば、そうした問題を解決できるはずです。
力を合わせて、日本のものづくりを活性化させたい
- 『令和の内職』は今後、どのように進めていきたいですか。
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中島:まずはハイメックスで、単純作業の切り出し方を確立して汎用性のある仕組みにし、他社にも適用できるようにしていきたいです。そして、先ほども言いましたが、このグローバル時代に、製造業の中小企業が活力を持って活躍できるようにしたい。その一環として、事業承継で困っている会社の手助けもしたいと考えています。もちろん、『令和の内職』もその一端を担っています。多様な働き方を尊重し、みんなで力を合わせていかないと、多摩地域の、ひいては日本の製造業は良くならないのではないかという危機感があります。また、中小製造業の業務改革に向けた多様な人材との連携サービスの検証として、一般社団法人Polyphonyや東久留米市商工会と連携した作業のアウトソーシングの取組も開始しております。日本のものづくりを活性化させる取り組みを、これからも続けていきたいですね。
会社情報
会社名 | 株式会社ハイメックス |
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設立 | 1990年11月 |
本社所在地 | 東京都東久留米市八幡町1-3-34 |
ウェブサイト | https://www.himecs.com/ |
事業内容 | ハイグレードなメカトロニクスを目標に掲げ、コアテクノロジーである「カプセルチャック」を中心に、原反を取り扱うための「マテハン小道具」とユニークなロール群「ユニロール」、機械の便利屋としての新たな付加価値創造を行う「アウトソーシング」による4つの事業を展開している。 |