『イキイキFit』で高齢者の健康寿命を延ばし、介護職員の負担も減らす | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
『イキイキFit』で高齢者の健康寿命を延ばし、介護職員の負担も減らす

『イキイキFit』で高齢者の健康寿命を延ばし、介護職員の負担も減らす

株式会社Accofit 代表取締役 髙木 理恵

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 株式会社Accofit(アコフィット)はシニアの身体改善を習慣化するプログラム『イキイキFit』を提供しています。高齢者が体力のレベルに応じて元気な身体を作れるだけでなく、介護職員の健康を守り、人材不足問題も解消できる画期的サービスを考案した代表取締役の髙木理恵氏に、ご自身の経験に基づく介護に懸ける思いを聞きました。

インタビューに答えていただいた代表取締役の髙木理恵氏

高齢者には身体改善が欠かせない

これまで、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

髙木:管理栄養士、運動指導者として、企業向けに従業員の健康管理をサポートしていました。日野市から依頼を受けた体操教室や、社会福祉協議会が主催のセミナーを開いた経験もあります。デイサービスを立ち上げた親戚を手伝っていた時期もあります。それが介護業界とつながるきっかけで、そのとき、私自身も介護職員初任者研修の資格を取りました。個人事業主として34年、地域のお年寄りが頑張っている姿を目にしてきました。一方、みなさん膝が痛い、腰が痛いと言っていたり、ガンを患って手術したりした方もいました。そんな状況を見て、高齢になれば病気やケガは「当たり前」と捉え、その状態からどうしたら「改善できるか」という視点が重要!だと認識し、現実と理想の分岐点が最も重要であると考えるようになりました。

父の死と祖母の回復から学んだこと

2018年4月の会社設立の経緯を教えてください。

髙木:まずは2001年、父が急性腎不全で亡くなった10日後に長男が生まれました。10日の間に人の生死に直面して、管理栄養士なのに父を守れなかったのは私のせいだと思い悩みましたし、仕事として何をすべきか真剣に考えました。それと2016年、要介護2だった祖母が絨毯に足を取られて尻餅をついて、腰痛を圧迫骨折してしまいました。環境が変わると認知症が進むので、病院から自宅に連れて帰ってきたのですが、祖母はトイレで迷惑をかけたくないと、水をあまり飲まなくなってしまいました。このままでは寝たきりになってしまうと思い、ケアマネジャーを頼んだのですが、祖母の場合は月に2回しかリハビリができない。それならと、自分でトレーニングを考え、母に頼んで毎日10分の運動を始めてみたところ、4カ月後には1人で用を足せるまでに回復したのです。トイレができると水も飲めるし、食事もできる。祖母はみるみるうちに元気になり、杖をついて歩けるまで改善しました。この2つの経験により高齢になってからの病後の体力改善や介護状態の対応次第で、その後の生活は大きく変わると実感したため、改善できる方法を伝えていきたいと思い2018年に会社を立ち上げました。

高齢者と介護職員の両方を支える

『イキイキFit』は、どのようなサービスなのでしょうか。

髙木:高齢者のADL(日常生活動作)を改善するプログラムです。介護施設などで動画を見ながら、寝たきりの方はベッドの上で、もう少し元気な方は座って、より元気な方は立って運動してもらいます。同時に、運動をサポートする職員の研修や自立促進コーチングのほか、介護職員の多くは腰痛や肩こりに悩んでいるため、健康づくりも進めています。『イキイキFit』は高齢者の身体機能改善を実現しながら、職員の重労働も削減できるのです。コロナ前は私が直接指導していましたが、施設入場の規制などもあったので、今は動画に切り替えてサービスを提供しています。冒頭5分で、認知症防止に食事がいい、毎日1.5Lは水を飲んだほうがいいという食習慣の改善をアドバイスしてから、運動のポイントや休憩のタイミングを職員の方もわかりやすい形で映像化しています。

イキイキFitは個々人の体力に合わせたプログラムを提供している

希望を持って自分にできることを頑張る

高齢者に『イキイキFit』を習慣化してもらうためのポイントを教えてください。

髙木:イキイキFitをするたびに記録としてノートに残してもらうことです。高齢者には、ご自身が書いたノートを確認し合ってもらっています。そうすると「毎日やってて偉いわね」とか「私サボっちゃったわ」という会話がモチベーションアップにつながります。また、老人ホームなどに入るよりも、自宅で家族に囲まれながら生活したいと考える一方で皆様家族に負担や迷惑をかけたくないと考える方も多くいらっしゃいます。家族に迷惑をかけないため、トイレだけは最後まで自分でやらなきゃダメと実感し、自然と運動を続けてくれるんです。みなさんに厳しい現実をお話するときには、同時に、運動を続ければ運動機能だけでなく、心も必ず成長するということを、経験談を交えて伝えています。例えば、あるお客さんは、「今日も1日イキイキFitを頑張れた。きっと明日もできるだろうと希望を持てる」と教えてくれました。無理をしないことばかりを強調する過剰介護ではなく、できることを伸ばすことに目を向ける。この方は「90歳過ぎると、無理しなかったら生きていけないの」と言っていました。

自らの経験と周囲の教えが説得力に

髙木さんの話しぶりには熱と説得力があります。

髙木:よく言われます(笑)。インストラクターをしていたときは自分の身体を絞って、新しいレオタードを買って、どうやったら人が集まるか、盛り上げられるか必死に考えていました。自分の体調が悪いときでも、「フッー!」と声を出して元気よくやる。あの経験が生きていると思います。最近、『イキイキFit』って私自身なのかなって思うんです。私が動画で「大丈夫だよ」「ここ意識してやって」と声を張り上げることで高齢者も介護職員も元気になれる。だから、髙木理恵が商品だ、と自覚しています。とはいえ、周りの方々に教えてもらうことのほうが多いんです。とある、大腸がんを患った方は、私と一緒に運動して元気になったのですが、肺がんでもう一度入院することになったのです。それでも病院のベッドサイドでスクワットを続け、元気になって帰ってきました。その方の話をすると、みんな前向きな気持ちで運動に取り組んでくれるんです。だから私は、みんなに伝えなければ、という使命感を持って頑張っています。

外部との連携を深めて介護職員不足を解消し、日本を変えたい

他社との協業を含め、今後の展望や可能性を聞かせてください。

髙木:2022年に娘が通う高校の生徒の方々と連携して「介護予防体操」を考案し、彼らが地域の高齢者に運動を教えて交流をはかる「地域でできるSDGsプロジェクト」を実施したことがあります。このように外部との連携することで、地域貢献につながる取組みをもっともっと増やしていきたいです。娘は現在、大学で運動理論を学んでいます。教育機関と連携して、そういった大学生、専門学生、あるいは主婦の方でもいいので、高齢者をケアする側の人材を増やせたらと思っています。国家資格よりもハードルを下げたインストラクターの認定制度ができれば、日本全体の健康意識も高まるはずです。介護施設でも運動専門、リハビリ専門と役割を分ければ、みんなの負担が減って、より良いサービスにつながると思います。また、介護の現場では人材不足と並行して組織の硬直化が問題になっています。せっかく新しい考えや新しい技術を学んでも、職場では今までのやり方が優先されてしまって、結局うまく活かせないといったケースが見られます。結果、職場の人間関係が嫌になり、離職率が高くなる。介護業界全体を良くするためのコンサルティングは、今後も続けていこうと思っています。それと大手の警備サービス会社さんが進めている「高齢者見守りサービス」のような形で、離れて暮らすご家族と協力して「イキイキFit」を届けることができたら、高齢者が元気になり、ご家族は安心できる。私一人では難しいかもしれませんが、このように、様々な企業や機関と連携していければ、日本の介護の世界が大きく変わるのではないかと考えています。

多摩で成功できれば日本全国どこでも

多摩地域とのつながりと、事業を営むうえでのメリットを教えてください。

髙木:私は生まれも育ちも立川市で、引っ越したことがありません。お客さんも地元の方々ばかりです。よく知っているし愛着もあるので、まずは多摩地域から発信しようと。自分の足下も固められないのに、よそさまで事業を始めるなんてという思いもありましたし、多摩地域で成功できれば日本全国どこでも成功できるという思いもありました。多摩地域は、とにかく便利です。自然があるし都会的なところもある。私自身よく知っている土地なので、どこにどんな問題があり、何が原因なのかアイデアが出やすいというメリットもあります。今年1月、東京たま未来メッセで開催された「たま未来・産業フェア」に出展したのも、多摩地域から発信したいという思いがあったからです。実際、異業種を含め多くの方と話して、可能性の広がりを実感しました。今後も、積極的に私の活動を発信していきたいです。

「たま未来・産業フェア」に出展した際のブースの様子

会社情報

会社名 株式会社Accofit
設立 2018年4月
本社所在地 東京都国立市東1-15-11 448ビル3F
ウェブサイト https://accofit.com/
事業内容 人材育成プログラムの提供/コンサルティング業務/企業の健康経営サポート/地域交流プロデュース業務

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