「自分の親にならどの施設を紹介するか」。顧客ファーストの老人ホーム紹介を目指す | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
「自分の親にならどの施設を紹介するか」。顧客ファーストの老人ホーム紹介を目指す

「自分の親にならどの施設を紹介するか」。顧客ファーストの老人ホーム紹介を目指す

ケアミックス株式会社 取締役 大門 直希

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 ケアミックス株式会社は、既存の老人ホーム紹介業に疑問を感じた柴田社長が2014年に創設した町田市に本社を置く企業です。「自分の親にならどの施設を紹介するか、自分たちが理想の紹介をしよう」。こうした柴田社長の想いに惹かれて2016年からケアミックス社に加わり、現在は取締役を務めるソーシャルワーク事業本部・本部長の大門直希氏に、事業内容について話を伺いました。

インタビューに答えていただいた取締役を務めるソーシャルワーク事業本部・本部長の大門直希氏

「利益>お客様」という方針に疑問を抱く

大門様の入社の経緯を教えていただけますか?

大門:大学卒業後、新卒で入社した飲料関係の営業会社に11年間勤めていたのですが、そこでの仕事が「いかに売上を上げるか」というスタイルで、自分には合わなかったのか次第にモチベーションを維持するのが難しくなっていきました。その頃から人から感謝される仕事、人の役に立つ仕事がしたいと考えるようになり、行きついたのが、ある老人ホーム紹介会社でした。しかし、企業としての利益追求も求められる中で、「自分の親にならどうするか」という理想の提案が難しい場面もありました。介護のことを全く知らないゼロからのスタートで様々なことを学び成長させていただきましたが、自分のスタイルとの違いに少し違和感を覚えることがありました。その後、柴田社長との運命の出会い。柴田もまた「自分の親になら、自分の家族になら」という想いを強くもっており、常に相手の立場に立って物事を考え、実践している姿勢に感銘を受け、ぜひ一緒に働きたいと思い入社を決意しました。

入居者の方に寄り添った提案を心がける

御社の主力事業とその特長をご紹介ください。

大門:弊社の主力事業は、老人ホームを探していらっしゃる方と老人ホームをつなぐ紹介事業で、「老人ホーム相談プラザ(https://www.roujinhome-soudan-plaza.com/)」を運営しています。この事業は老人ホームの運営会社から紹介手数料をいただいて成り立っているのですが、紹介手数料は運営会社によって幅があります。利益だけを追求するなら手数料の高い老人ホームを紹介したほうが良いかもしれません。ですが私たちは、「私たちが紹介する老人ホームが長い人生を頑張ってこられた方の最期のお住まいになるかもしれない」という事を常に念頭に置き「自分の親にならどの施設を紹介するか」という基準で、その方に寄り添い、その方に合った施設を紹介しています。会社の利益よりもお客様の利益を最優先にし、プロフェッショナルとして知識や技術を身につけ、できるだけ入居者のご家族と対面で面談してミスマッチが起こらないよう心がけていますので、実際、前職に比べて入居後もお客様から頼りにしていただくケースは多く、信頼を得られていると実感しています。

地域と老人ホームをつなぐハブとなる

地域社会とも連携した取り組みをされているとか。

大門:弊社には地域連携員と呼んでいるスタッフがいます。地域連携員は高齢者の生活支援や介護相談を行っている地域包括支援センターをはじめ、様々な事業所を訪問し、地域と老人ホームをつなぐハブになっています。地域連携員が自分たちの事業に対する姿勢や質に自信を持ち、精力的に活動をしているのも弊社の強みのひとつです。自分たちの会社や事業に誇りや自信をもつからこそ、その想いが訪問先に伝わると思っていますので、私たちは常に会社全体として襟を正していかなければならないと思っています。

ケアミックス社が目指している老人ホーム紹介を語る大門氏

個人の旅行や外出、団体の旅行に看護師を派遣する“ツアーナース”

老人ホームの紹介事業のほかに、「ツアーナース」という事業も特徴的です。

大門:この事業は、ご高齢の方や病気を患っている方が旅行や外出をする際に同行する看護師を派遣するサービスです。例えば、健康面の不安からお孫さんの結婚式への参列を諦めていた方でも、看護師が同行することで参列が実現することもあります。人生最期の旅行を楽しみたいという方からのご依頼もあります。私たちが運営している「日本ツアーナースセンター(https://www.japan-toursnurse.com/)」は全国各地からご依頼を受け、メディアでも取り上げていただくことが多く、最近では弊社のサービスをご利用いただき人生最期のお墓参りをした半身麻痺の91歳の男性の例も紹介されました。

日本を代表する航空会社との連携

ツアーナース事業に対する需要の高まりは感じますか?

大門:すごく感じますね。JAL(日本航空株式会社)やANA(全日本空輸株式会社)をはじめ、プライベートジェットの航空会社とも連携しています。旅行で飛行機を利用したいけれど健康上の理由から諦める方が多いそうで、航空会社もこの課題に対処したいと考えているようです。そうしたお客様がいた際は私たちにお声がけいただき、看護師を派遣しています。私たちは、ただ看護師を派遣しているのではなく、ご本人やご家族の要望や希望、不安等にしっかり耳を傾け、さらに必要に応じて医師や看護師から情報提供を受けたり、航空会社とも連携し、より安全にご搭乗いただけるように調整等を行ったりもしています。他にも、同居している親が介護状態で手が離せず、ご家族が旅行に行けないというケースもあります。こちらもANAと連携しており、老人ホームの紹介事業と協働して短期利用(ショートステイ)できる介護施設をご紹介しています。まだまだ件数は多くありませんが、航空会社にとっては様々なお客様への対応の幅が広がるという点でメリットがあるようです。

徘徊しても居場所が分かるサービスを展開

他に、認知症患者のご家族向けのサービスも実施されていますね。

大門:認知症における症状の中でも徘徊はご本人とご家族の生活に精神的・肉体的にも多大な影響を及ぼします。行方不明者も多いですよね。そこで、認知症の方が万が一徘徊してしまっても、いまどこにいるのかをGPS端末を用いて探せる「認知症徘徊GPSセンター(https://www.ninchisho-haikai-gps.com/)」を運営しています。他社さんのサービスでは初期費用が必要だったり、契約期間が1年や2年と長いケースもあり、実際に活用できるか、また認知症徘徊がいつまで続くかわからない中、せっかく便利なGPSの利用を諦めてしまっている人が大勢いることを知り、私たちは初期費用不要で、契約期間も1か月と使いやすく、解約しやすい仕組みにしました。今では、気軽に試せることも好評で、行政にも提供させていただいております。

GPS端末を入れた専用のお守り。杖や身近なものにつけられるように工夫をこらしている

インキュベーション施設で感じたメリット

本社は町田新産業創造センターに入られています。インキュベーション施設のメリットはどのようなところに感じますか?

大門:まずは行政が運営する施設に入居することで、お客様の安心感につながります。また、半期毎に施設のインキュベーションマネージャーに面談をしていただき、客観的な立場の方からアドバイスをいただけるのもとても有難く私たちの成長に欠かせないものとなっています。私は藤沢の事業所の立ち上げを任されたのですが、そこでもインキュベーション施設に入居しました。半期に一度の面談では、いま自分がやっていることが間違っていないかを確認でき自信を持って事業を進められたので、自分たちの振り返りにもなりました。同じ施設の他の企業の方ともご近所づきあいのように自然とつながりができて、そういった関係性の中で、ある方の親御さんが入居する老人ホームを紹介したこともありました。

“ケアミックスDNA”という羅針盤

今後の展望をお聞かせください。

大門:現在は老人ホームの紹介事業が弊社の事業の柱となっていますが、今後は日本ツアーナースセンターをはじめ、昨年より運営を開始しました「日本訪問看護人材紹介センター(https://homenurse-agent.com/)」等の事業も伸ばしていきたいと考えています。また同時に会社の規模ももっと大きくしなければなりません。ただし、会社としての土台が強固でないと、人が増え規模が大きくなっても崩れてしまいます。そのために、創業から10年間、先を急がず、強い土台作りに注力してきました。従業員全員が同じ未来を描けるよう、弊社ではこれまで築き上げてきた企業理念や価値観、行動指針、コンプライアンス行動規範を総称して”ケアミックスDNA”と位置づけ、冊子にまとめています。日々の業務に取り組むなかで迷うこともあると思いますが、”ケアミックスDNA”を向かうべき方向を示す羅針盤としています。これからも、”ケアミックスDNA”を大切にしながら社会に役立つ仕事をしていきたいですね。

手に持っているのは、ケアミックス社のキャラクター「クオスケ」。
愛らしい笑顔から「世界一幸せな動物」と呼ばれるクオッカ(カンガルーの仲間)をモデルにしている

会社情報

会社名 ケアミックス株式会社
設立 2014年6月
本社所在地 東京都町田市中町1-4-2 町田新産業創造センター3階
ウェブサイト https://www.care-mix.co.jp/
事業内容 ソーシャルワーク事業(「老人ホーム相談プラザ」の運営)/ワークシェアリング事業(「日本イベントナースセンター」「日本ツアーナースセンター」「日本ホームナースセンター」の運営)/ケアマネジメント事業(「日本訪問看護人材紹介センター」「認知症徘徊GPSセンター」の運営)/CSR活動(「絵本寄付書店」の運営)

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