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設計から保守まで。グループ内連携を生かし顧客の「造りたい」をサポート

株式会社内藤電誠町田製作所

代表取締役 浅賀 博行

インタビューに答えていただいた浅賀博行氏

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 電子機器の設計から製造・保守までを一貫して手がける内藤電誠町田製作所。センサーや無線技術を活用したIoT開発や医療・宇宙分野にも領域を広げ、グループ企業との連携で“つくって終わりではない”ものづくりを実現しています。浅賀博行氏に、現場に寄り添いながら技術で支える同社の事業内容や強みについて、詳しくお話を伺いました。

グループの力を生かしたものづくり体制

内藤電誠グループの概要をご紹介ください。

浅賀:私たち内藤電誠グループは、4つの会社で構成される体制のもと、それぞれの強みを生かしながら事業を展開しています。中でも中核を担っているのが、内藤電誠工業株式会社です。ホールディングス機能を持ちつつ、電子デバイスの開発・設計や最終パッケージング工程を九州の工場で行っています。また、神奈川県・溝の口では、X線検査や故障解析など、製品の性能や安全性を評価・解析する部門も展開しています。ソフトウェアの開発や電子デバイス等の販売を担当するのがデンセイシリウス株式会社。そして、私たち内藤電誠町田製作所は、電子機器の企画から開発・生産、そして保守サポートまでをワンストップで手がける会社です。グループそれぞれの役割を連携させることで、お客様の多様なニーズに、柔軟かつ丁寧にお応えできる体制を整えています。

お客様のアイディアをカタチにする

御社の強みを教えてください。

浅賀:当社のミッションは、お客様の「こういうものを造りたい」という想いをカタチにして、量産につなげていくことです。電子機器の設計から製造、そして保守までを一貫して行う「ものづくり」が、私たちの事業の中心にあります。本社は東京都町田市金森にあり、開発部門も同じ場所に集約。さらに、山梨県南アルプス市には2棟の比較的大きな工場を構えており、量産に対応できる体制を整えています。

開発を担う技術者の多くは、回路設計や基板製作、評価などを担当するハードウェアエンジニアです。実際のモノを目の前にしながら、試行錯誤を繰り返すスタイルが基本となっています。また、マイコンやCPUに組み込む制御ソフトウェアの設計も社内で対応しており、ハードとソフトの両面から製品開発を支える体制を築いています。さらに、筐体やケースといった外装部分を手がける機構設計のエンジニアも在籍しており、外観や使い勝手にも配慮した設計が可能です。最近では、IoT関連のご依頼が増えており、センサーで取得したデータを無線でやり取りするシステムの開発に携わることも多くなっています。特にWi-FiやBluetoothなどの無線通信技術を生かした設計開発は、私たちの得意分野の一つです。

産業機器と医療機器、現場を支えるものづくり

特に注力されている分野はありますか?

浅賀:私たちが特に力を入れているのが、産業機器の分野です。弊社がもともとNEC様のモノづくりをサポートする会社として立ち上げられている関係もあり、NEC様との長年のお取引を通じて、60年以上にわたる実績を積み重ねてきました。その中で、多くのお客様から産業機器関連のお仕事を継続的にご依頼いただいてきたことが、私たちの大きな強みになっています。

また、ここ数年で医療機器の分野にも本格的に取り組むようになりました。たとえば、医療機器メーカーからの依頼で開発した、造影剤を注入する医療装置。この装置は、腕から注射された造影剤が血管を通って体内を流れ、その様子をMRIやCTで撮影するために使われます。通常は静脈内にきちんと入るはずの造影剤が、まれに針の位置ずれなどで皮下に漏れてしまうことがあるのですが、これが非常に痛みを伴います。意識がある患者さんであればすぐに異常を訴えられますが、麻酔中など意識のない状態だと、それが難しい。そこで私たちは、LED照明と変色検知センサーを組み合わせたボードを開発しました。皮膚の色の変化を捉え、異常があればBluetoothを通じて本体に通知できる仕組みです。患者さんの安全を守ると同時に、使いやすさにも配慮したこのような取り組みは、“縁の下の力持ち”としての私たちの役割を体現する開発の一つだと思っています。

研究成果を、暮らしの安心につなげる

産学連携による耐震診断装置も開発されたと伺っています。

浅賀:これは、松本設計様と東京大学の先生方が進めてこられた共同研究の社会実装をお手伝いしたプロジェクトです。もともとの研究テーマは、「地震が起きたとき、加速度センサーのデータから地震のエネルギーを割り出し、それを建物の耐力と比べることで、安全性を評価できるのではないか」というもの。すでにパソコン上で動くシミュレーション用のプロトタイプは完成しており、私たちはそれを実際の暮らしに生かせる形に落とし込むフェーズでご相談をいただきました。具体的には、建物の1階と2階に加速度センサーを設置し、揺れ方の違いから固有振動数をリアルタイムで計算。そのデータをもとに、「この建物は今、在宅避難しても大丈夫なのかどうか?」を即時に判断できる装置として開発しました。災害時の冷静な判断をサポートする、いわば“建物の健康診断ツール”のような役割を担います。

さらに、こうしたデータをクラウドに集約・可視化することで、地域ごとのリスクを把握できたり、工務店の方が「自分たちが建てた家の中で、どの建物がダメージを受けているか」をすぐに確認できるようにもなっています。私たちはこのプロジェクトで、センサー機器のハードウェア設計に加え、クラウドシステムやスマートフォンアプリの開発も担当。研究から実装まで、現場目線で一緒に並走するかたちでサポートさせていただきました。

グループ連携で、“全部まるごと”任せられる安心

開発にあたりグループ内ではどのような連携があったのでしょうか?

浅賀:このプロジェクトでは、内部の基板設計から外装筐体まで、すべて自社で企画・設計を行い、山梨県南アルプス市の工場で生産・組立を行ったうえで、お客様に納品しました。さらに、センサーから得られたデータをクラウドに送信する仕組みや、クラウド上で動作するシステム、スマートフォンで確認できるアプリケーションの開発は、グループ会社であるデンセイシリウス株式会社と連携。ハードとソフト、両方の開発力を持つグループ2社の協働体制でプロジェクトを支えました。これは、内藤電誠グループとしての“連携力”を生かした好例だと感じています。お客様にとっては、私たちグループを「ワンウィンドウで相談できる窓口」としてご利用いただけるため、工程ごとに別会社に依頼する必要がなく、工程間で起こりがちな“すき間の責任”を生まずに済むというメリットがあります。こうした社内外の垣根を越えた連携体制によって、よりスムーズで、手間の少ない開発プロセスを実現できると考えています。

設計・製造・保守まで社内でできる強み

すべて社内で完結できるのが強みなのですね。

浅賀:当社には、ハードウェアの設計を担うエンジニアが約40名、制御プログラム(ソフトウェア)を担当するメンバーが十数名在籍しています。さらに、製品の保守・サポートを専門とするスタッフも3名体制で対応しており、“つくって終わり”ではないサポート体制も整っています。実は、こうしたハードもソフトも、保守まで含めてすべてを自社で持っている会社は、それほど多くありません。設計から生産、そして納品後の対応まで、ワンストップで完結できることが、私たちの大きな強みです。

たとえば、設計と製造を別会社で行っている場合、「この設計では製造が難しい」「この部品には工具が入らない」といった後戻りが発生することもあります。でも私たちは、自社で製造まで手がけているからこそ、“実際に作れる設計”を前提にものづくりができる。だから、ムダのない、スムーズな開発が実現できるんです。また、設計と生産のチームが日常的に情報を共有しながら開発を進めているので、たとえば万が一トラブルが起きた場合でも、「設計と製造のどちらに原因があるのか」がすぐに見える。その場で相談して、すぐに対応するということが、日々の業務の中で自然にできる体制になっています。こうした“一貫体制”があるからこそ、お客様にも安心して任せていただける関係性が築けていると感じています。

宇宙関連事業にも生かされている技術力

宇宙関連の案件にも関わっていると伺いました。

浅賀:はい、詳細についてはお話できない部分も多いのですが、私たちはJAXA(宇宙航空研究開発機構)が進める木星氷衛星探査機「JUICE(ジュース)」プロジェクトの一部に携わらせていただき、その貢献に対して表彰もいただきました。また、JAXA以外の宇宙関連プロジェクトにも関わっています。たとえば、地球の周りを漂う宇宙デブリ(スペースデブリ)を回収するための技術開発の一部にも関与しています。現在、世界中で多くの人工衛星が打ち上げられる中で、使われなくなった衛星や破損した機体が軌道上に残る“宇宙ごみ”の問題が深刻化しています。私たちはその解決に向けて、デブリとの距離を非接触で計測するためのセンサーなど、回収作業を支える装置の一部開発を担当しました。目立たないながらも、こうした分野にも私たちの技術が使われているというのは、社内でもちょっと誇らしい話の一つです。これからも「見えないところで支える技術者集団」として、地上から宇宙まで、幅広いフィールドで力を発揮していきたいと考えています。

“ものづくり×ICT”で、社会の見えない部分を支えたい

最後に、今後の展望をお聞かせください。

浅賀:私たちはこれまで、お客様の「こういうことを実現したい」という想いに寄り添いながら、ICT技術を活用してそれをカタチにする取り組みを続けてきました。今後はその領域を、もっと広げていきたいと考えています。ICTの進化とともに、IoTをはじめとした技術の可能性はどんどん広がっています。ただ、私たちの根っこには「ものづくり」があります。だからこそ、センサーなどを使ってアナログな情報をデジタルに変換するような仕組みづくりには、特に強みがあると自負しています。目立つことは少ないかもしれませんが、“縁の下の力持ち”として社会や産業を支える技術者集団でありたい。そしてその取り組みが、お客様やその先にいる人たちの役に立っているということを、ちゃんと伝えていけるようにしていきたいと思っています。最終的には、社員一人ひとりが「自分の仕事を家族に誇れる」ような会社でありたい。そんな想いを持ちながら、日々のものづくりと向き合っています。

会社情報

会社名 株式会社内藤電誠町田製作所
設立 1965年10月
本社所在地 東京都町田市金森4-12-5
ウェブサイト https://www.ndk-m.co.jp/
事業内容 電子機器の開発、設計、製造、販売、保守およびサービス/マイクロコンピュータ関連機器/IoT/ICTシステム機器/高密度基板実装/各種DMS事業、EMS事業