グリーンスローモビリティを通じて高齢者の新たな交通手段を提供 | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
グリーンスローモビリティを通じて高齢者の新たな交通手段を提供

グリーンスローモビリティを通じて高齢者の新たな交通手段を提供

株式会社モビリティワークス 代表取締役 西 利也

本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。
このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

町田市に本社を構える株式会社モビリティワークスは、高齢者の新たな〝足〟として注目を集めている電動カート事業を、市内で展開しています。そのカートは、起業家でIT企業の経営者でもある西利也代表取締役が、80代や90代の住民の意見を踏まえ開発したものです。西代表にカートによって実現したいまちづくり像などについて聞きました。

インタビューを受けて頂いた、西 代表取締役

町田創業プロジェクトの支援を受けITベンチャーを設立

起業の経緯を教えてください

西:システム開発を行う会社に勤めていましたが、200人以上の部下を抱えるようになりました。最優先の仕事は人の管理。とにかく忙しい日々を過ごす中で、段々と「ものづくりに真剣に取り組みたい」という思いを抱くようになりました。そこで、町田創業プロジェクト(町田市と地域の支援機関等が連携して実施する創業支援プログラム)の支援を受け、2016年に株式会社ZipSystem(ジップシステム)を設立しました。システム開発やITコンサルティングなどが主な業務です。

地域に貢献したいという思いが創業の原動力

町田で創業した理由は

西:妻が町田市で働いていたこともあり、25年ほど前に市内に越してきました。新宿に40分で行けるし、ちょっとした都会だし、自然も豊か。そんなところが気に入って家も建てて、ずっと住み続けています。当然ながら地元への愛着は強まってきますよね。「地域に貢献したい」という考えから、町田を登記上の本社としました。

住民の声は「ITは不要」「公共交通が欲しい」

町田で創業した理由は

西:市内には総戸数が約3000に上る鶴川団地という公団住宅があります。開発されたのは1960年代。約半世紀が経過して住民の高齢化も進んだため、町田市主導で団地の活性化に向けたプロジェクトが始動しました。私もメンバーに加わり、「得意とするITを使って地元に恩返しをしたい」という思いで住民との意見交換会に臨みました。

しかし、いきなりカウンターパンチをくらいます。約40人の参加者の中で長老ともいえる住民が開口一番、「ITは要らないな」と言ってきたのです。地域通貨と地元情報を発信するアプリで活性化という構想は、もろくも崩れ去りました。気を取り直して何が必要なのかを問うたところ、返ってきた答えは「公共交通が欲しい」。団地は高台にあり坂道も多く、上り下りが大変という切実な思いが込められていました。ITというプロダクトを入れることより、地域の方のニーズを大切にしようと考え、住民に本当に求められている公共交通手段の事業に着手しました。

お互いに職業を知らなかった飲み友達が、開発の協力者に

どういった経緯で事業化にこぎつけたのですか

西:環境問題のことを考えると、排気ガスを出さない電動系が必須です。候補となる乗り物を探していたところ、「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」という時速20キロ未満で公道を走る4人乗りの電動カートと出会いました。事業を本格展開するために設立したのが、株式会社モビリティワークスです。カート部品の生産は中国の工場に委託しています。それを日本で組み立てる必要があり、協力してくれる人を探していたところ、知り合いが「電気自動車のプロが身近にいるじゃないか」と教えてくれました。そのプロというのは近くの店の飲み友達。とても親しいのに、実は彼の職業を知らずにいました。「手伝うよ」と即座に引き受け色々な人を紹介してくれて、事業にこぎつけることができました。

買い物や外出に困っている高齢者向けの送迎サービス

事業概要を教えてください

西:買い物や外出に困っている高齢者を対象とした送迎サービスで、2019年12月から実施しています。事業主は社会福祉法人悠々会(町田市で高齢者福祉事業を展開)で、UR都市機構が駐車スペースや電源設備などを提供、モビリティワークスが車両の提供や事業のコーディネートを担当します。週に3回、2台のカートが団地と商店街の間を走ります。利用料金は年間500円で、20数人が定期的に利用します。運転手は地元のボランティアの方にお願いしております。

鶴川団地に住む高齢者の足となっているカート

多摩ニュータウンにも適したサービス

多摩地域は坂道が多いため、地域全般に親和性があるサービスだと思います

西:多摩ニュータウン(東京都稲城市・多摩市・八王子市・町田市にまたがる多摩丘陵に計画・開発され住宅地域)の地形は鶴川団地と同様に坂道が多くて、移動が大変です。居住者の高齢化が進んでいけば、この問題はさらに深刻化すると思われます。楽に地域を移動したいという高齢者のニーズに対してこのグリスロ事業は非常にマッチすると思っています。グリスロを運行することが、多摩地域全体にとってプラスになればいいなあと考えています。実際、地域内の新たなエリアで検証を進められないかといった話も出ています。

グリーンスローモビリティを活用して小中学生向けの課外活動も

仕事以外でも地元に貢献されているのですか

西:「西さん頼むよ」といった形で市民活動に呼ばれることが多く、アドバイザー的な立場で色々なところに首を突っ込んでいます。今年の夏休みには市内の公園で行われた、小中学生を対象とする課外活動に携わりました。グリスロに乗って電気自動車が果たす役割を通じ、地球温暖化問題について考えてもらうのが目的です。楽しく学んでレポートにまとめたようですよ。

町田市内の公園で小中学生を対象にした課外活動を実施。グリスロを通じ、地球温暖化問題を考えてもらった

車がなくても普通に暮らせる街づくりを

グリスロを活用して、町田でどういった街づくりを進めたいと考えていますか

西:地方の方々は「多摩」といえば奥多摩を連想します。町田が多摩地域にあるということは、あまり知られていません。そんなこともあって、色々なことに取り組める余力がある都市だと思っています。私は独立して会社を立ち上げた時、「街づくりに携わりたいなあ」といった希望がありました。理想としているのは、年齢を重ねても快適に住める都市です。それを実現するには、車がなくても普通に暮らせるようにすることが必要です。グリスロがこれから果たす役割は、大きいと思っています。

会社情報

会社名 株式会社モビリティワークス
設立 2018年12月
本社所在地 〒194-0021 東京都町田市中町1-4-2 町田新産業創造センター218
ウェブサイト https://www.mobilityworks.co.jp/
事業内容 「グリーンスローモビリティ」(電動で、時速20km未満で行動を走る4人乗り以上のパブリックモビリティ)を地域社会へ根付かせるために下記の事業を中心にサービス展開を行う。 ・電動カートのリースおよび販売 ・電動カートを用いた事業のコンサルティング ・電動カートおよび関連部品の修理、取付、改造 ・広告代理業および各種宣伝に関する業務

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