令和6年度多摩イノベーションコミュニティのキックオフイベントを開催しました。
多摩イノベーションコミュニティ活動全体のキックオフとして、前半では、本年度ご用意している複数のプログラム紹介に加え、令和4年度リーディングプロジェクト選定企業であるレコテック株式会社より多摩地域でオープンイノベーションに取り組む際のポイントについてご講演いただきました。
また後半では、オープンイノベーションの考え方や進め方に関する講義に加え、自身の成し遂げたいことを再認識するために自らの経験やきっかけを振り返る原体験ワークショップを開催しました。
この報告では、当日のイベントの様子や参加者からのご意見を紹介します。
本年度の事業・プログラムのご説明
はじめに、多摩地域の特徴や課題などの多摩地域の外観をご紹介し、多摩イノベーションエコシステム促進事業の全体像についてご紹介しました。事業の1つの柱である多摩イノベーションコミュニティについて、その目的や目指すべき将来像について説明し、本年度実施するプログラムとして、「事業構想ワークショップ」「事業発信ワークショップ」「プロジェクト創出ワークショップ(リバースピッチ)」「アイデア具現化支援」についてご紹介しました。
「事業構想ワークショップ」は、全3回開催を通じて、協業による新たな事業案の策定に向けた講義及びグループワークを実施する内容となっています。10月以降実施予定の「事業発信ワークショップ」は、マーケットイン型の事業案の着想・ブラッシュアップや、事業推進に関連する支援者・協力者との交流・連携の促進を目的としています。8月より開催する「プロジェクト創出ワークショップ(リバースピッチ)」では、地域課題解決に取り組む大企業や自治体等が抱えている課題やニーズについてご紹介いただき、マーケットイン型のプロジェクト創出に繋げます。「アイデア具現化支援」は、社会実装に向けて取り組みを進めているビジネスアイデアを募集し、ハンズオン支援を通じて、次年度以降の実証に向けた準備を整えていく取り組みです。
基調講演・対談「多摩地域におけるイノベーションプロジェクト」
レコテック株式会社 荒井亮介様
八王子市 資源循環部ごみ減量対策課 前川健一様
レコテック株式会社は、令和4年度リーディングプロジェクトにおいて、八王子市内のスーパー、収集業者と連携し、家庭から排出される廃食油の回収プロジェクトを実施しています。
レコテック株式会社・荒井氏からは、リーディングプロジェクトへの応募に至った背景やプロジェクトの取組状況等のご紹介とともに、多摩地域でオープンイノベーションに取り組む際のポイントとして、「連携先と相互に弱点を補完すること」や「自治体や地元スーパーのように地域の核となる主体や拠点との連携」が重要であること等についてお話しいただきました。
また、リーディングプロジェクトで実証フィールドとなった八王子市の前川氏からは、行政の人員不足をレコテック株式会社のアイデアや人的面で補完できたこと、また環境にやさしく共感できる取り組みであったため、市役所内での調整が円滑に進んだこと等がプロジェクトの実証が成功した理由であるとお話いただきました。
会場の参加者からは、「各家庭への取組の周知・告知にあたって苦労した点はあるか」との質問が寄せられ、荒井氏からは「レコテックとして各家庭への訴求方法を有しておらず苦労したが、八王子市より市民への告知についてご協力をいただいた。スーパーへの協力依頼も、八王子市の職員に同席いただいたおかげで実現でき、全体を通じて強力に支援をいただいた。」とのご回答をいただきました。また、八王子市前川氏からも「相互に弱点を補いながら事業を進められたことが、事業実施のポイントの1つであった」とのご意見をいただきました。
第1回事業構想ワークショップ
講義「オープンイノベーションの進め方」
講義では、「オープンイノベーションの基本概念とメリット」、「イノベーション創出の成功事例」、「今後取り組むにあたってのポイント」についてご紹介しました。
はじめに、オープンイノベーションとは、「経営資源と経営資源を組み合わせてサービス開発や、事業を創出すること」という基本概念を説明した上で、オープンイノベーションに取り組むメリットとして、自社が持たない技術や知見の獲得に加え、外部資源の活用により収益増加やコスト削減・時間短縮 等が期待できる点について説明しました。
また、オープンイノベーションの一例としていくつかの事例をご紹介しました。植物由来のバイオマスを主な原料として新素材を開発するSpiber株式会社では、自動車部品メーカーと共同出資会社を設立し、生産・供給体制を構築した他、大手衣料品メーカーとの共同開発により技術開発やマーケティング面での体制強化にも繋げられています。また、レコテック株式会社では、回収拠点の提供者、収集運搬事業者、再資源化を行う事業者等の役割に応じた連携先と協業したことで、家庭からの廃食油の回収・再資源化のサービスを構築することができました。株式会社シンクアロットでは、園児向け国際交流プログラムの効果測定に関して国際基督教大学の教授よりメンタリングを受けたことで、検証精度の向上に繋がりました。このように、オープンイノベーションに取り組むことで、新たな事業創出や既存の事業のさらなる価値向上に繋がっていることをご紹介しました。
最後に、今後オープンイノベーションに取り組む際のポイントとして、新規事業の創出にあたっては、プロダクトアウト発想だけでなく、マーケットインのアプローチを取り入れることで失敗のリスクが低減することについて説明し、今後のワークショップを通じて自社技術の言語化や市場動向から事業機会・ニーズの整理を行っていくことを紹介しました。
原体験ワークショップ
事業構想ワークショップ(全3回)では、協業による新たな事業案の策定に向けた講義及びグループワークを実施します。第1回となる本ワークショップでは、第2回以降のワークショップで共創方針を定め、共創案を作り上げていく前段として、事業創出意欲を高めることを目的として、自身の原体験の振り返りを行いました。
「原体験」とは、人の思想形成に大きな影響を及ぼす幼少時の体験を意味しています。経営者の多くは「原体験」が動機となり起業・独立に繋がっているケースが多く、ミッション・ビジョン・バリュー策定のベースとなっていることを説明しました。
次に、今までの人生を振り返りながら自身の思想形成に大きな影響を与えた体験を掘り下げるための感情曲線を作成しました。また、原体験を踏まえ関心のある社会課題と解決策について整理し、ストーリー化していくことで、「本当に自分がやりたかったことは何か」を見つめなおす機会としました。
本ワークショップで整理した原体験をもとに、次回のワークショップでは自社の強みの棚卸し等を通じて共創方針を検討していきます。
交流会
自由参加の交流会では、ワークショップで共有した原体験をもとに「今後取り組みたいこと」「今までの取り組んできたこと」「自社のミッション」等、より深いディスカッションに繋がっていました。また、名刺交換や事業内容の紹介を通じて、今後予定している取組や実証先としての提携に向けた打合せの設定、共通テーマでの協業に向けた検討等、具体的な議論に結びついた交流も行われました。
参加者の声
ご参加いただいた方の声を一部ご紹介致します。
・日々の仕事ではなかなか大きな視点で考えることがないため、大変良い機会となりました(スタートアップ)
・原体験を振り返ることで、自社のミッションを見直すきっかけとりました(スタートアップ)
・オープンイノベーションに対する考え方を改めて理解することができました(大企業)
・現在、取り組みを進めているアイデアにご協力頂けそうな企業様とつながることができました(中小企業)
多くの方に満足いただけるイベントとなりました。
本年度も多数のイベントを開催していきますので、ご関心のある方は是非ご入会ください!
今後のイベントスケジュール
https://tama-innovation-ecosystem.jp/event/workshop-2024/3106/
コミュニティの入会概要と申し込みページ
https://tama-innovation-ecosystem.jp/community/