中小企業の再生を通じ、多摩地域で”強いローカル”を構築する企業へ | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
中小企業の再生を通じ、多摩地域で”強いローカル”を構築する企業へ

中小企業の再生を通じ、多摩地域で”強いローカル”を構築する企業へ

つばさホールディングス株式会社 代表取締役 猪股浩行

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。 

                                            

 一台の小さなトラックから始まった、つばさホールディングス株式会社は、 経営難に喘ぐ中小企業の事業再生を手掛けながら、物流、整備、食品加工といった事業を行う7社のグループ会社と6社の関連会社を抱える大組織に成長しました。多摩地域の企業の良き相談役として、多くの経営者から頼られている猪股浩行代表取締役に経営哲学をうかがうと、つばさホールディングスグループの成長の理由が見えてきました。

インタビューに答えていただいた猪股浩行代表取締役

営業マンの経験が起業のヒントに

引っ越し会社を起業された経緯を教えてください。

猪股:もともと営業会社を経営していましたが、うまくいかなかったため、一度、会社を畳みました。当面の生活費を稼ぐため、引っ越しのアルバイトを始めたところ、とてもおもしろかった。引っ越しはお客様の家財を運ぶ仕事なので、家の中に入りますし、会話もしますよね。そこで信頼を得られれば、例えばカーテンの販売やリフォームの会社を紹介したり、口コミで他のお客様を紹介していただけるのではないか、という仮説を立て引っ越し会社を立ち上げました。

経営はうまくいきましたか。

猪股:4畳半のアパートから始めた会社でしたが、8年ほどで年商17億円まで成長しました。しかし、耐震偽装問題やリーマンショックで景気が落ち込むと、経営も苦しくなりました。その時、同じように苦しむ中小企業の経営者から色々な相談を受ける中で、高栄運輸という会社の事業再生を任されました。この会社が今のつばさホールディングス株式会社の母体となっています。

キーワードは“自律と連帯”

運送事業を中心に積極的にM&A(合併・買収)を進めて事業を拡大し、2019年にはホールディングス化されました。その狙いはどこにあるのでしょう。

猪股:少子高齢化によるマーケットの縮小や後継者不足により、多くの中小企業が淘汰される中で、事業再生の相談を受けていると、株式を引き取ってもらえないかという流れになるんですね。しかし、コーポレートガバナンス(企業統治)が効いていない企業は、株式を取得しただけでは改善が困難だったため、ホールディングス化してそれぞれが“自律”できる仕組みを整えました。
 また、コロナ禍で海外からのサプライチェーンが分断されたことからもわかるように、地域のなかで“連帯”して“強いローカル”を築くことが、生き残っていくためには必要です。自律と連帯。これが我々の戦略のキーワードです。

ホールディングス化の経緯を語る猪股社長

M&Aという究極の企業間連携で強いローカルを構築

M&Aという手段を用いて多摩地域の企業を再生し、“強いローカル”を実現しようとされているのですね。

猪股:そうですね。地域に密着した歴史ある企業の事業を承継して、新しい価値を生み出してきました。一昨年には、多摩地域の上場会社から株式を取得し、事業を存続させました。エイチディーエス株式会社は、昭島市の昭和飛行機工業から別れた会社で、もともとはハーレーダビッドソンの有名なディーラーだったのですが、正規代理店契約の解消に伴い売上が激減し、喫緊の課題として抜本的な売上体制を再構築する必要がありました。そこで我々が経営を引き継ぎ、まずは事業領域を明確にして、経営資源の集中投下を行いました。いまはカスタム整備や整備、車両・パーツの販売などが主力事業になっています。もともと技術のある会社だったこともあり、単月黒字化を達成し、“自律”化に成功しました。
 また、同じ多摩地域のつながりで同じく経営難に直面していたフォスター運輸(現FUロジテック)の株式も取得しました。地域に根付いた歴史ある企業であり、運送事業・整備事業が我々と親和性が高く、高いシナジーが期待できると考え、交渉を行いました。グループの一員となってからは、グループ内企業との連携を図って事業を拡大し、昨年は4年ぶりとなる大型車両2台を導入する等、設備投資を実施。社員の意識改革も行い、単月黒字化も実現しました。

同じ地域のけやき出版と広報業務で連携

グループ企業以外にも、多摩地域の企業との横のつながりはありますか。

猪股:立川にある、けやき出版様には広報業務でお力を借りています。具体的には、けやき出版様が取り組む『BALL.COMPANY』というギルド型組織を活用しています。フリーランスのデザイナーや編集者の方などのスペシャリストが所属されており、そこでご紹介いただいた多摩地域のクリエイターの方々に、弊社の『flap Web』というオウンドメディアのデザインやブランディングを手がけていただきました。

自らの意志で動く「自燃人」を増やすために

『flap Web』では「自燃人」という言葉を用いられていますが、人財育成についてどのような思いを持っていますか。

猪股:人を育てることは簡単ではありません。その人が一番輝ける環境を提供して、自ら動く自燃(じねん)の精神を持った人をサポートするやり方でないと、人は育たない。自らの意志で動く人を増やすためには、ロールモデルが必要です。「あの人はカッコイイな」という見本がいると、自然と自分もそうなりたいと行動を起こすはずです。

ロールモデルの重要性を説く猪股代表取締役

“カッコイイ社長”を増やす人財育成

グループ企業の垣根を越えた人財育成の取組はありますか。

猪股:グループ企業に“カッコイイ社長”を増やしたいという思いから、「ヒト☆ピカ経営・プレジデントスクール」という取組を始めました。ビジネスのスキルやテクニック、業界の知識などはさることながら、経営者にとって大事なのは、人がついていきたくなるような意思決定の仕方など、いわゆる帝王学と言われる分野です。卒業生の中からは幹部や取締役など、会社の主軸を担う人財が育っています。昨年の7月には1期生の菅野友則さんが、グループ企業の多摩フードサプライの代表取締役社長に就任しました。
 今後も若い人財に権限を渡していこうと考えています。ビジネスを前に進めていくためには、これまでの成功体験にとらわれない柔軟性が必要です。頭の柔らかい若い人たちには、無限の可能性があると感じています。

長く続く会社の共通点とは

以前に「入社式は親御さんからの引き継ぎ式」とおっしゃられていました。

猪股:新卒の方々には、これまで育ててこられた親御さんから、責任を持ってお預かりするという意識を持って接しています。結局、一番大切なことは、人と人とのつながりです。会社とは、そこで働く人が幸せになるための器のような存在です。長く残っている会社は、経営者が自分の損得に関わらず、地域や社員の方たちを大切にしています。これからも、多摩地域から日本へ、魅力ある雇用を生み、次の世代へ経営のバトンをつないでいきたいと考えています。

7社のグループ企業を束ねる、つばさホールディングス

会社情報

会社名 つばさホールディングス株式会社
設立 1973年8月
本社所在地 〒190-0012 東京都立川市曙町2-38-5立川ビジネスセンタービル11F
ウェブサイト https://tsubasa-holdings.co.jp/
事業内容 グループ会社(つばさロジスティクス株式会社、株式会社カーライフサービス多摩車両、株式会社多摩フードサプライ、エイチディーエス株式会社、エールロジスティクス株式会社、FUロジテック株式会社、つばさリスクマネジメント株式会社)の経営管理、ならびに付随する業務。

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