アナログからデジタルへ。学校教育の現場にテクノロジーで貢献 | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
アナログからデジタルへ。学校教育の現場にテクノロジーで貢献

アナログからデジタルへ。学校教育の現場にテクノロジーで貢献

株式会社TERADA.LENON 取締役COO 宮崎 拓也

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 株式会社TERADA.LENONはクリッカーという学校教育の現場で使われる機器の製造・販売を手掛ける企業です。教室というアナログの場にテクノロジーの力でLearning Innovation(学びの革新)を起こしたい。その思いを社名の「LENON」に込めた取締役COOの宮崎拓也氏に、事業内容について詳しく話を聞きました。

取締役COOの宮崎拓也氏

現場の声がきっかで誕生した『LENON』

御社の主力事業であるクリッカーとはどのような製品なのでしょうか。

宮崎:クリッカーはもともと「クリックする」という意味から名付けられた製品です。主な機能としては、生徒一人ひとりが手元の端末のボタンを押して出席を取る“出席管理”の機能が挙げられます。着席状態を基準に出席管理を行うため、出席表への記入や出入口での学生証の読み取りに比べ、より精度の高い出席状況が得られます。もう一つが、“出題・回答”の機能です。講師側が簡易的なテストを出題し、生徒がいくつかの選択肢から答えを選んでクリックして回答することで、ストレスなく出題、回答集計を行うことが可能になります。また、回答のデータを集計することで、講義中に学習の効果を評価することもできます。

 弊社がクリッカー事業を始めたきっかけは、私の母校の大学の先生が関与しています。以前は教授が講義を行い、生徒はそれを聞くだけの授業が多かったようなのですが、当時の教授は学生とより多くコミュニケーションを取りたいと考え、学生を名前で識別できる手段があれば、教育の形が変わる可能性があると考えました。こうした要望から、生徒の名前と出席状況をその場で把握できる機能や、授業中にリアルタイムで出題・回答が可能な機能を実現した弊社のクリッカー『LENON』が誕生しました。

 ちなみに、社名でもある『LENON』には二つの意味が込められています。一つが「Learning Innovation(学びの革新)」。この言葉を縮めたものが『LENON』です。もう一つが、教育には「想像する」といった意味の「Imagine(イマジン)」が必要だという考えから、名曲『イマジン』を作ったジョン・レノンを連想し、名前をお借りしました。ジョン・レノンの実際のスペルは「LENNON」で「N」が二つ続きますが……。

ハンディ型と設置型、それぞれの特徴とは

クリッカーには「ハンディ端末型」と「設置型」があるそうですが、それぞれのメリットとデメリットを教えてください。

宮崎:昔から一般的に使われているクリッカーのタイプは「ハンディ端末型」と呼ばれ、電卓のような外観の端末です。ただし、このタイプは学籍番号を入力するだけで使用できるため、人が入れ替わっても確認できません。そのため、代理出席が可能であり、また、授業ごとに端末を回収する必要もあり、オペレーションが煩雑です。近年では、スマートフォンのアプリによって同様の機能が提供されており、弊社もそれを採用しています。

ハンディ型のクリッカー

 一方、『LENON』という社名を冠している「設置型」は、先ほど申し上げたハンディ型のデメリットを解消するために弊社が開発した製品です。文字通り座席に固定して使用するタイプで、学生証に埋め込まれたICチップを読み取り、本人確認を行います。先生にはどの座席に誰が座っているのかがわかり、この点が一般的なクリッカーとは異なる点です。弊社ではクライアントの意向にそって、ハンディ型と設置型を提案しています。

設置型のクリッカー

医療系の学校で多数の導入実績を誇る

御社のクリッカーを導入している学校はどれくらいありますか?

宮崎:現在、約30校が弊社のクリッカーを導入しています。その多くは医療系の学部や学校です。医療系の学校・学部は国家試験の合格実績が生徒の誘因に大きく影響するため、高い合格率を目指すために生徒が積極的に授業に参加する仕組みづくりを行っています。

 医療系の学校・学部での導入数が多い理由はもう一つあります。医療系の学部では実習が多い傾向があり、その分、講義の回数が減少しています。講義に充てられる時間が限られてしまうため、これまで紙を使うなどアナログな方法で時間がかかっていた部分をデジタル化するなど、一度の講義で情報を効果的に伝える必要があります。こうした場合に、クリッカーを使用して講義の理解度を確認したり、前回の講義の復習を行ったりして、学習効果を向上させることができます。講義ごとに生徒の理解度を評価することで、学習が遅れている学生のサポートを行っているのです。

授業で使用していたクリッカーに興味を抱く

宮崎様の入社の経緯について教えてください。

宮崎:私の通っていた大学では有線のクリッカーを使用していて、それを納品している業者が弊社の前身の会社でした。当時はまだ出席を取る際は紙に記入していたり、講義も黒板に板書していたりしたのですが、これから教育現場のIT化が進む可能性を感じ、クリッカーに興味を持ちました。ちょうど就職活動中だったこともあり、会社側も若い人材を探していた時期で、面接を受けて入社が決まりました。当時は社長と取締役の二人しかいなかったので、同期も年齢の近い先輩もおらず、教育を受ける機会が少ないのではないかという不安もありました。しかし、もともと人数が少ない会社だからこそ、すぐに現場で経験を積めると考えていましたので、覚悟を持って入社しました。

入社1年で任された大仕事が自信につながる

これまでの仕事で、印象に残っている案件はありますか?

宮崎:入社して1年くらいしか経っていないときに、東京歯科大学さんが新校舎の建設を計画していました。そこで東京医科大学さんの営業担当であった私に弊社の製品をプレゼンテーションする機会が与えられました。当初、上司がプレゼンを行うものと思っていたのですが、その学校の担当教授が「あの若者にやらせてみよう」と私を指名してくださいました。その担当教授は一見ぶっきらぼうで、最初はかなり緊張しました。失敗すればクリッカーの導入が見送られる可能性もあるプレッシャーの中で、相当に鍛えられました。結果的にセールスも成功して、それが自信につながったので、いま振り返ると、あの経験は非常に大きかったと感じています。

目下、クリッカーの“進化版”を提案中

クリッカー事業で培ったノウハウを生かした事業はありますか?

宮崎:実は、その東京歯科大学さんから最近、新しい実習室を構築する際に協力をお願いされました。私自身、この業界で十数年の経験があり、さまざまな学校を訪れてきました。その経験を生かし、新たな提案を行っています。具体的には、実習室内の各席にカメラを設置し、AIを活用して学生の進捗をトラッキングするシステムを提案しています。これにより、学習が遅れている学生をサポートしやすくします。まさにクリッカーの“進化版”と言えるでしょう。クリッカー事業で蓄積した知識を生かし、こうした次世代の教育環境をデザインする新しい試みに挑戦しています。

教育の現場が止まったコロナ禍に新たな事業を展開

顔認証システム、検温システム、二酸化炭素濃度測定システムなど、コロナ禍に関連する事業も行っていますね。

宮崎:コロナ禍の影響で生徒が学校に通えなくなり、クリッカーの需要も低下しました。この厳しい状況を乗り越え、会社として存続するために、顔認証システムや検温システムなど、コロナ禍に関連する新たな事業展開を行いました。

 弊社が提供している『FaceOffice』は、顔認証技術を活用して出退勤管理や来訪者の受付を行う製品です。このシステムの特長は、クラウドサーバーを使用せず、社内ネットワークを活用するため、ランニングコストがかからないことです。さらに、認証率は99%と非常に高く、双子の方以外のユーザーにおいてほぼ認証エラーが発生しません。このシステムを応用して、園児の送迎時や生徒の登下校管理を効率化するための『RealFaceタイムリー』というクラウド型システムも開発しました。このシステムは、LINEやメールを通じて事前に指定した第三者に到着や退出情報を通知することができます。以前、園児が送迎バスに取り残されてしまうといった悲しい事故が発生したことから、この製品はそうした悲劇を未然に防ぐことを目的としています。

顔認証システムが搭載された『FaceOffice』

会社のほど近くにある鶴間公園が憩いの場

多摩地域との関りについて教えてください。

宮崎:弊社はもともと、町田に拠点を置く寺田電機製作所(現在の株式会社TERADA)の一部門として始まりました。そこから独立するにあたり、親しみのある町田で事業をしたいという思いがあったのだと思います。私自身は相模原市で生まれ育ち、町田や八王子など隣接する地域によく遊びに行っていました。このエリアは自然が豊かで住みやすく、働きやすい場所であり、都心へのアクセスも便利です。特に緑が豊かな点が気に入っていて、弊社の近くにある鶴間公園はよく訪れています。お昼休憩の際、リフレッシュするために散歩に行ったり、休日には家族と一緒に遊びに出かけたりしています。この公園は、地元の方々にとって憩いの場として大切にされている印象です。

空間デザインという新たな領域への挑戦

今後の目標を聞かせてください。

宮崎: 実は、代表から4年後に会社を継ぐように言われています。今後も少子化が進み、18歳以下の人口が減少していくなかで、これまでの事業を継続しつつ、変革が必要な部分に取り組んでいきたいと考えています。会社を成長させるために、クリッカー事業で培った知識を生かし、教育空間全体のデザインに関わる事業を展開していく構想を考えています。教育コンサルティングの分野には他の企業も存在しますが、私たちは現場での経験に裏打ちされた学生目線のコンサルティングができると自負しています。10代から20代前半の重要な時期に、学生たちが充実した学生生活を送れるような事業を展開し、日本の教育に貢献したいと考えています。

会社情報

会社名 株式会社TERADA.LENON
設立 2009年10月
本社所在地 東京都町田市鶴間1-19-6
ウェブサイト https://t-lenon.com/
事業内容 講義支援システム、AI顔認証による検温・セキュリティシステムおよびCO2 濃度管理システム等の販売

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