地域とともに課題解決に取り組む、FC東京の歩みとこれから | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
地域とともに課題解決に取り組む、FC東京の歩みとこれから

地域とともに課題解決に取り組む、FC東京の歩みとこれから

東京フットボールクラブ株式会社 マーケティング本部長 兼 エリアプロモーション部長 平山 隆史

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 プロサッカークラブ「FC東京」を運営する東京フットボールクラブ株式会社は、東京都をホームタウンとして様々な活動を展開しています。なかでも多摩地域との関係は密接で、創設時から多摩地域を中心に、自治体と連携して多くのホームタウン活動(社会連携活動)を行ってきました。そうした活動の統括者である平山隆史氏に、FC東京が取組んできた地域社会との連携について話を聞きました。

インタビューを受けていただいた平山隆史マーケティング本部長

プロスポーツクラブ初。東京都とワイドコラボ協定を結ぶ

平山様の仕事内容について教えてください。

平山:現在、マーケティング本部長とエリアプロモーション部長を兼務しています。マーケティング本部は広報プロモーション、CRM、マーチャンダイジング、エリアプロモーションの4つの部署から成り立っており、私は統括的な立ち位置で主にtoC事業の取りまとめをしています。簡潔に言うと、スタジアムに新しくファン・サポーターを呼び込むための施策や、FC東京に興味を抱いている方々へのサービスの提供、観戦満足度の向上などが主な取組となります。兼務しているエリアプロモーション部長としてのミッションは、地域の方々にFC東京に興味をもってもらうことと、FC東京を通じて地域の課題解決に貢献することです。私自身は東京都を担当していて、様々な活動で連携しています。

具体的にはどのような連携をされているのでしょうか?

平山:例えば東京都の課題解決や事業告知などに、FC東京のリソースを活用していただく提案をしています。2023年3月には東京都とFC東京との間でワイドコラボ協定(※1)を締結しました。プロスポーツクラブとしては初めてです。具体例を一つ挙げると、東京都が節電をはじめとした電力確保の取り組みを進めるHTTの事業において、弊社の選手がPRに起用されたり、イベントに参加したりしています。小規模なものも含め、協定締結から既に40以上の取組で連携しています。

事業への思いを語る平山氏

 

※1ワイドコラボ協定
地域社会の発展と都民サービスのさらなる向上を目指し、東京都が企業等との間で複数の政策分野にまたがる包括的かつ横断的な連携・協力を進めるための協定。

https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/cross-efforts/wide-collabo-kyoutei/fctokyo

地域社会と連携して行うホームタウン活動

自治体との連携といえば、Jリーグクラブの特徴的な取組としてホームタウン活動(※2)が挙げられますが、貴クラブの取組を教えてください。

平山:クラブの創設以来、数え切れないほどの活動を行ってきていますが、例えば2022年から始めた「フードドライブ」では、調布市やNPO法人フードバンク調布、調布市社会福祉協議会と連携し、食べ物を必要とされている方々に対して、食品を集めて送る活動を行っています。2022年11月に初めて実施し、翌年6月には飛田給駅から味の素スタジアムまでの道路を歩行者専用にして実施するイベント「青赤ストリート」にブース出展し、道中で食品を集める活動を行いました。多くの方に立ち寄っていただき、フードバンクの存在を広く知ってもらえたことは収穫です。他にも、高齢者向けの体操教室や、多摩少年院での更生保護支援など、クラブが場所やアイデアを提供しながら、連携先の方々がクラブを有効活用できるようサポートしています。

フードドライブ活動の様子(写真提供:FC東京)

※2ホームタウン活動
Jリーグクラブがホームタウンと定めている地域で行う活動。Jリーグ規約第24条第2項 では「Jクラブはそれぞれのホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブづくり(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない」と定められている。

価値ある活動ほど広まらないジレンマ

自治体との連携によって新たな気づきや発見はありましたか?

平山:自治体や地域はひとつひとつは細かな、しかし幅広い課題に直面していて、そこに対して多岐にわたるアプローチが取られています。ただ、これらの課題は報道やニュースで取り上げられないため、当事者以外の一般の方々が気づくことは難しいと考えます。
 同様に、社会連携に注力しているJリーグのクラブが様々な活動を行っている一方で、その良い事例はなかなか世間に広まりにくい。地域の役に立つような価値のある取り組みをしても、メディアはあまり取り上げません。良いことほどニュースにならず、ショッキングな出来事のほうがニュースになる傾向がありますよね。社会連携活動をしていて、あらためて感じました。

地道な努力が実りサポーターに浸透した「CCAゴミ拾い活動」

地域社会との連携において重要なことはなんでしょうか。

平山:継続的に活動を行うことです。やり続ければ、その活動が地域社会に浸透していくと思います。例えば、石川直宏クラブ・コミュニケーター(※3)が始めた「CCA(クラブ・コミュニケーター・アクション)ゴミ拾い」は、最初は彼に会いたいという動機で参加する人もいたかもしれませんが、回を重ねるごとに活動の意義を感じてくれる方々が増え、現在ではファン・サポーターやボランティアのみなさんがそれぞれの地域で自主的に「CCAゴミ拾い部」として活動するほどになっています。こうした活動が地域に継続的に広がっていくためには、ファン・サポーターや地域のみなさんの自発的な参加と活動も重要です。短期的には結果は出ませんので、大変ではありますが地道に取組み続けることで、新たな価値を生み出す可能性があると考えています。

CCAゴミ拾い活動の様子(写真提供:FC東京)

※3石川直宏
2002年から2017年までFC東京で活躍したサッカー元日本代表。2017年に引退した後はクラブ・コミュニケーター(CC)という肩書きでクラブとファン・サポーター、地域社会、企業などのコミュニケーションを促進する役割を担っている。

スクール&普及活動でも地域に還元するのがクラブの理念

「プロサッカークラブの運営」と並ぶ主要事業の一つに「サッカースクールおよびサッカーの普及活動」があります。貴クラブの取組について教えてください。

平山:普及部という部署のコーチ陣が子どもたちを指導する年中から中学生までの子どもたちにサッカーを通じて身体を動かす楽しさを伝えるサッカースクールを運営しています。その他にも、大人向け、女性向け、障害者向けなど、様々なカテゴリーに対してサッカーの普及活動を展開しています。Jリーグのクラブはアカデミーといって、小中高の各年代でチームを保有していることが多いのですが、現時点ではFC東京は小学生年代のチームを持っていません。その理由は、Jリーグのクラブが小学生年代のチームを持つと、その地域から優秀な選手を引き抜くことになり、結果的に地域全体の競争力や指導力の向上にはつながらない可能性があるからです。FC東京は、サッカースクールや地域での指導者講習会を通じて選手や指導者を育成し、地域社会に還元するという理念のもと、小学生年代の指導にあたっています。保護者のみなさんはお子さんを有名なチームに入れたいという気持ちが強く、FC東京の将来的な強化という意味では現在のスタイルが正解かどうかは分からないですが、地域社会とともに歩んでいく覚悟がそこに表れていると思います。

FC東京が運営しているサッカースクール(写真提供:FC東京)

FC東京と多摩地域の切っても切れない関係性

調布市や府中市など多くの自治体と協定を結んで活動をされていますが、FC東京にとって多摩地域とはどのような位置づけなのでしょうか。

平山:府中市、三鷹市、調布市、小平市、西東京市、小金井市の6市はFC東京の株主になってくださっている自治体です。中でも府中市、三鷹市、調布市の方々はその頭文字を取って“FMC”という組織として、クラブの創設や東京スタジアムをホームスタジアムにするにあたって深く関与してくださいました。また、練習場のある小平市とその隣の西東京市、小金井市も含めて、市長をはじめ行政、教育委員会、商工会、青年会議所、サッカー協会などの各団体から商店街に至るまで、市をあげてFC東京を応援してくださっています。 FC東京のホームタウンは東京都全域ですが、クラブは創設からずっと、この6市を中心に様々な活動を展開してきました。
 他にも、国立市、国分寺市、狛江市などでも教育委員会や各団体との連携により、学校の授業に普及部コーチを派遣したり、「体力」「スポーツに親しむ機会の向上」などに焦点を当てた小学校低学年向けのオリジナル教材「あおあかドリル」を使って基本的な身体の動かし方を学ぶ実践授業を実施するなど、教育支援も行っています。

強いクラブになることで、活動の価値を高めていきたい

今年でクラブ創設25周年を迎えましたが、地域とともに歩んできたサッカークラブとして、今後、FC東京はどのような方向に進んでいきたいですか?

平山:今年行った調査によると、東京23区でFC東京を知らないと答えた人が19.6%、多摩地域でも8.9%いました。これに対して、埼玉県のさいたま市では浦和レッズを知らない人が3.9%という結果で、東京都という広いホームタウンであることを差し引いても、FC東京の知名度に課題があることが示唆されています。FC東京が地域のために様々な活動をしていても、クラブが知られていないと、活動自体もなかなか認知してもらえず広まっていきません。クラブ自体がもっと広く知られて興味を持ってもらえることが不可欠ですし、そのためには強いクラブであることも重要だと思っています。「FC東京の活動だったら参加してみよう」と思ってもらえるような強いクラブになり、かつ地域に役立つホームタウン活動を今後も継続してやり続ける。より地域に貢献できるクラブとして成長していくことが、目指すべき方向だと思います。

※所属、役職、プロフィールは取材当時(2023年)のものです。

会社情報

会社名 東京フットボールクラブ株式会社
設立 1998年10月
本社所在地 東京都調布市下石原1-2-3 TSOビル
ウェブサイト https://www.fctokyo.co.jp/
事業内容 プロサッカーチーム「FC東京」の運営/サッカースクールおよびサッカーの普及活動/チームのオリジナルグッズの製作・販売

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