Web制作のトータルクリエイティブ企業が、AI×ARで世の中に新しい価値を生み出す | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
Web制作のトータルクリエイティブ企業が、AI×ARで世の中に新しい価値を生み出す

Web制作のトータルクリエイティブ企業が、AI×ARで世の中に新しい価値を生み出す

有限会社kivotoys 代表取締役 山田 光輝

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 有限会社kivotoysの山田光輝代表取締役は、インターネット黎明期からWeb制作のプロフェッショナルとして活躍しています。最近はWeb制作にとどまらず、カフェの運営や、AIやARを活用した自社企画のコンテンツ制作にもチャレンジするなど、一般的なWeb制作会社の枠を超えたクリエイティブな事業を手掛ける山田代表に、kivotoysの事業内容について詳しくお話を伺いました。

インタビューに答えていただいた山田光輝氏

リクルート関連企業から独立

起業の経緯について教えてください。

山田:リクルート関連の会社に8年ほど勤めた後、独立しました。会社員として勤務していた当時はCD-ROMやゲーム機などが次々と登場し、ウェブメディアも徐々に現れ始めていた時期で、新しいメディアを研究するという、いわば研究職のような業務を担っていました。
その頃は、任天堂やセガのような大企業だけでなく、いわゆるインディーゲームのような、小規模な資本でゲーム機器や関連製品を開発する会社が現れ始めていました。「マルチメディア」と呼ばれる分野で、CGなど様々な技術を組み合わせた新しいメディアがゲームに限らず様々な領域で展開されており、「これはメディアが変わるタイミングかもしれない」という考えが広がっていました。その中で、次第に大企業に頼らずに個人や小規模の会社でも活躍できる可能性に気づき、「これなら自分でもできるかもしれない」と感じて、独立を決意しました。

事業の柱はWeb制作

現在の事業内容をご紹介ください。

山田:これまでは採用サイト制作やコーポレートサイトの制作が中心でしたが、現在は教科書を発行している出版社とのWeb制作に関する取引が主になっています。それも一般公開されているWebサイトの制作というよりは、デジタル教科書などをWeb上で展開する仕事が多いです。例えば、書道の動画を撮影し、先生方が生徒に教える際のサポートをするコンテンツ制作などを手掛けています。現在はWebツールやコンテンツの制作が事業の大きな割合を占めている状況ですが、Web制作以外の自社サービスの中からも、事業の軸になるようなものがでてくればと考えています。

デイケアサービスを展開する企業と連携し新サービスを開発中

現在注力している自社サービスはどのような事業ですか?

山田:AIとARを組み合わせたサービスをいくつか開発しています。一つは、ARのキャラクターと会話ができるツールです。これは、多摩イノベーションコミュニティで知り合った、高齢者や発達障がいの子どもたちのデイケアを展開している企業と連携して開発しています。このツールをデイケアで活用することで、日々の会話を通じた利用者の気持ちの変化や傾向をデータ化して把握できるようになればと考えています。収集したデータを基に、その日の調子などをご家族と共有する仕組みです。現状では、デイケア側とご家族との間で、「今日はこんな感じでした」といったざっくりとしたコミュニケーションに留まっていることが多いそうです。このツールを使えば、日々の様子や変化を記録・共有しやすくなり、デイケア側とご家族との間でより具体的な情報を共有できるようになるのではないかと考えています。現在、この企画を進めている段階です。
このツールはプロンプトを変えることで、観光や展示会、医療などさまざまな分野に応用できます。現時点では、テキストベースのARはよく見かけますが、会話ができるARというのはまだあまり普及していません。そこで、私たちはアプリのダウンロードを必要とせず、QRコードで簡単にアクセスできる、ブラウザ上で動作するツールを開発中です。これにより、導入のハードルが低くなると考えています。

ARのキャラクターと会話ができるツールを開発中。写真は高尾山の観光案内をしてくれるサービス。
日本語だけでなく、英語、中国語など多言語対応可能

病院と連携しリハビリゲームを共同開発

病院と連携してリハビリゲームも開発しているとか。

山田:八王子にある北原国際病院では、脳梗塞の患者さんが多く、腕が動かなくなったり、後遺症が残っている方々がリハビリを行っています。私たちのスタッフの母親も脊髄損傷を患っており、その経験から「リハビリで苦労している方に何かできないか」という話が出たのがきっかけです。病院の方々から話を聞く中で、リハビリをする時間はあっても、補助してくれる人がいないとトレーニングが進まないという課題があることがわかりました。そこで、自主的にトレーニングができるツールを作れたらいいのではという考えに至りました。そのツールは、カメラで検知した手の動きでゲームを行うリハビリサポートシステムです。手を動かすことでリハビリができる仕組みを作り、現在北原国際病院に、実際に使えるかどうかのアドバイスをいただいている段階です。
勉強やスポーツでも「これからトレーニングします」と言われるとモチベーションが上がりにくいですよね。しかしこれをゲーム形式にすると、知らないうちに楽しく運動しているということがあります。リハビリも、現在のトレーニングは、例えば「ここからここまで腕を動かしましょう」というような「リハビリしている」という感じが強いものが多いです。私たちは、このリハビリをもう少しゲーム感覚で楽しめるような仕組みにしたいと考え、今取り組んでいるところです。

少人数でも完結できるARの可能性を信じて

そもそも、なぜARとAIの事業をやろうと考えたのでしょうか。

山田:最初にマルチメディアの分野で感じたのが、ARにも通じるところがあるなという点です。ARといえば、一般的にはポケモンGOのような大規模なARコンテンツが主流だと思うのですが、実際には、WebARのように予算が少なくても、シンプルで遊び心のあるコンテンツをたくさん作れる可能性があるんじゃないかと感じています。今の業界では、ゲーム会社や映像制作会社に所属し、専門的なモデリングだけを担当するような、細分化された作業が主流になっています。しかし、もっと少人数、例えば2〜4人のチームでも、コンテンツを完結させることができると考えています。YouTuber界隈でも、クリエイティブチームが映像作品を作っているように、ARの世界でもそういった小規模なチームが活躍する時代が来るかもしれません。以前マルチメディアで経験したように、キャラクターデザイン、音楽制作、プログラミングなど、すべてを少人数で完結できる環境がARにもあると感じています。これはとても面白い発想で、だからこそARに挑戦してみようと思いました。
とはいえ、世の中に面白いARの事業があまりなく、「じゃあまずはTシャツで試してみよう」という話になりました。このTシャツのQRコードを読み込むと、ARが立ち上がる仕組みです。AR自体は、ちょっとしたくだらないアイデアでも、面白いものが作れるんじゃないかと思っています。そのうちに「キャラクターに喋らせてみよう」という話になり、AIを使って試してみたら、思いのほかすぐに喋ってくれたんです。そこで「あ、これはまた違う展開ができそうだ」と感じました。

QRを読み込みTシャツにスマホカメラを向けるとARが立ち上がる

他業種のプロフェッショナルたちの知恵と経験を生かしたい

ARとAIを組み合わせることで、どのようなビジネスが生まれそうですか?

山田:いろんな分野で活用できそうだと思っている反面、どうビジネスとして成り立たせるか、今は試行錯誤中です。特に、マネタイズの部分については、介護にしても観光にしても、各業界の勝手がまったくわからないので、その業界で長年事業をされてきた企業様と連携できれば、こちらが考えている以上のアイデアがたくさん出てくるんじゃないかと思っています。「こんなことはできないか」といったリクエストをいただければ、それに応じて「じゃあこうしてみましょう」と提案できるので、さまざまな業種の企業様と組んでいけたらと考えています。広範な分野になりますが、そういったパートナーとマッチングして、ともに進めていけるのが理想ですね。

この場所で様々な人が混ざり合い新しい何かが生まれれば

トートバックなどの雑貨を販売するカフェも営業されています。

山田:独立した当初は個人で仕事をしていたので、仕事中でも妻や犬と一緒に過ごせるよう、事務所兼トートバッグの雑貨店を始めました。しかし、その物件が取り壊されることになり、現在の場所に移転しました。そのタイミングでカフェも開業しました。今後は営業形態を変更し、日替わりでさまざまな方がこの場所をシェアして利用できるようにしたいと考えています。いつか独立してお店を持ちたいと考えている方や、月に一度くらい趣味としてカフェを開き、自分の料理を提供したいという方もいると思います。そういった方々が混ざり合いながら新しいものが生まれればいいなと思っています。

二番煎じではない新しいことに挑戦し続けていく

会社として今後の事業の展望は?

山田:正直、ちょっと迷走している部分もあるというか(笑)、会社として方針を定めて事業をやっていこうというより、それぞれの企画がうまく進んでいけばいいなという気持ちが強いんです。だから、会社としてどうこうと言われると、少しぼんやりしてしまうところがありますね(笑)。ただ、今取り組んでいるチャレンジはどれも、世間一般にあるものの二番煎じではないと思っていて、自分たちで新しいことに挑戦し、それがうまく形になっていくことにとてもやりがいを感じています。だからこそ、いくつものプロジェクトを同時に進めているという状況です。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、お金のためだけに「きついな」「つまらないな」と思う仕事をするのは、やっぱり嫌だなって思うんですよね。もちろん、収入がないと困るので、そこはしっかり頑張らなきゃいけないんですけど、やはり楽しく仕事をするというのをベースにやっていきたいです。

会社情報

会社名 有限会社kivotoys
設立 2003年7月
本社所在地 東京都国立市東1-16-29 ハーツ国立2F
ウェブサイト https://kivotoys.jp/
事業内容 Web制作(企画、デザイン、htmlコーディング、プログラミング、サーバー設計等)/AIやARなどを活用した自社企画

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