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試作品製作のプロフェッショナル集団。メーカーのものづくりを“裏方”として支える

株式会社フォルム

代表取締役 堀江 仁人

インタビューに答えていただいた堀江仁人氏

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 製品が世に出る前の原型を形にする――。試作品製作を専門とする株式会社フォルムは、家電・自動車業界を中心に産業界の試作品製作を主幹事業とする日南グループの一員として、35年にわたり日本のものづくりを支えてきました。今回は、堀江仁人代表取締役に、フォルムの事業内容とグループの強みについてお話を伺いました。

裏方としてメーカーのものづくりを支える

事業内容をご紹介ください

堀江:弊社は「ものづくり」の会社です。といっても、携帯電話のように皆さんの手元に届く最終製品を大量生産するのではありません。私たちの仕事は、それらの製品が世の中に出る前の段階、メーカーさんが社内でデザインを検討するために必要とする“試作品”を専門に作ることです。フォルムは創業から35年目を迎えましたが、この間ずっと、国内の大手家電メーカーを中心に、イヤホンやパソコンなどの試作品づくりに取り組んできました。製品が世の中に出る前の“原型”を形にする、そんな裏方としてメーカーのものづくりを支えています。

一般の消費者にはあまりなじみのない領域ですが、ものづくりのプロセスにおいて、実際に試作品を作ることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

堀江:実際に“モノ”として作る理由は、皆さんも何となく想像できるかと思います。たとえば、ウェブサイトで見た旅館と、実際に訪れた旅館では、雰囲気や印象が全然違うことってありますよね。あれの“ものづくり版”だと考えていただくと、分かりやすいかもしれません。確かに、画面上でデザインを見て「これ、いいね」と思うことはあるのですが、いざ実物になると「ちょっと全体のボリューム感がありすぎるな」とか、「このマーク、思ったより小さくない?」とか、「ここはもっと凹凸をつけたいよね」といった微妙なニュアンスが出てきます。そうした感覚をリアルに確認できることに、試作の大きな価値があると思っています。だからこそ、私たちのような試作専門の業者にも、今なお必要とされる役割があるのだと感じています。

表面処理の技術力に絶対の自信

御社の強みや特色はどのような点にありますか?

堀江:我々の最大の強みは、「塗装」や「表面処理」といった仕上げの技術にあります。社内には大きく4つの部隊があり、素材を削って加工する部隊、塗装などの表面処理を担う部隊、印刷を担当する部隊、そして最終的な組み立てを行う部隊が、それぞれ専門的に役割を分担しています。なかでも、高い技術力を誇っているのが、塗装と表面処理の分野です。塗装はスプレーガンという機器を使って塗料を吹きつけていくのですが、ただ素材に塗ればいいというわけではありません。表面が粗かったり仕上がりにムラが出たりすると、美しく見えないため、「磨き」や「仕上げ」といった工程を通して、滑らかで美しい表面に整える必要があります。私たちはこの“表面を整える”という部分にこだわってきました。たとえば、3Dプリンターで形を作って塗料を塗るだけでは、表面がザラついたり安っぽく見えたりします。そこで、本物同様の質感や色味を出したいとなったときに、私たちの技術が力を発揮します。

また、プロのデザイナーの方々とやり取りを重ねてきた中で、感性で語られるご要望にも丁寧に応えてきました。そうした“プロの感覚”に応える対応力や、35年間にわたって積み上げてきた経験も、私たちの大きな強みだと思っています。今後はこの表面処理技術を生かして、たとえばハイエンド家具やノートパソコンのカスタム塗装といった、既製品に付加価値を加える新たな領域にも展開できるのではと感じています。

日南グループの一員だからこそ発揮できる強み

御社の親会社である株式会社日南、そして日南グループ全体の概要について教えていただけますか。

堀江:親会社である株式会社日南は、現在で創業56期目を迎えています。この会社を立ち上げたのは、私の父であり、日南グループの代表でもある堀江勝人です。そして私自身は、事業承継の第一歩として、約3年前にグループ会社である株式会社フォルムを引き継ぎました。株式会社日南の創業当初は、ネジサイズの小さな部品を、当時の彫刻機のような加工機で数十個製作し、お客様に納品するという、まさに「加工」からスタートした会社でした。社名の「日南」は、父の出身地である宮崎県に由来しており、地元の人々に親しみを持ってもらいたいという思いから名付けられたものです。その後、部品加工の技術を磨きながら、大手メーカーのプロダクト試作の仕事にも関わるようになり、主に家電業界のお客様向けに試作部品の製作を行うようになりました。さらに約30年前には、自動車業界の試作分野にも参入。現在は家電業界や自動車業界を中心に事業を展開しつつ、近年では食品メーカーや素材メーカー、さらにはスタートアップ企業など、より多様で幅広いお客様とのお取引が増えています。

日南グループ全体での連携を通じて、どのような相乗効果や強みが発揮されていますか?

堀江:日南グループ全体としては、日南本体が各業界のお客様からご依頼を受け、そこから各グループ会社の強みを生かしてプロジェクトを進めていくという連携体制を構築しています。たとえば、表面処理に関してはフォルムが強みを持っていますので、「この部分はフォルムにお願いしたい」といった形で役割分担をしています。一方で、富山や宮崎にあるグループ会社は加工機を多数保有しているため、フォルムで受けた案件の加工をこれらの拠点に依頼する、といった連携も日常的に行っています。こうしたグループ間の柔軟な連携により、お客様の多様なニーズに応えながら、より高品質なものづくりを実現しているのが日南グループの大きな強みです。

リクルート勤務を経て、父の経営する日南グループに参画

前職のご経験や、事業承継の経緯について教えてください。

堀江:私は大学卒業後、人材系の会社であるリクルートに入社し、新卒採用向けの求人媒体「リクナビ」を提案する営業を、北海道エリアで約2年間担当していました。実は就職活動を始めるまで、親の会社である株式会社日南がどのような事業をしているのか、正直あまりよく分かっていませんでした。ただ、当時はインターンなども積極的に経験していたので、「一度親父の会社を見てみようかな」と訪ねてみました。そこで初めて事業内容を自分なりに調べてみたところ、意外と面白いことをやっている会社だな、と素直に感じました。

そこで、新卒で入る会社は「将来的に日南グループへ戻ること」を前提に選ぼうと考えるようになりました。当時の自分は経営についての知識も経験もほとんどありませんでしたが、「まずは経営者と多く会えるような環境で働いてみたい」と思い、リクルートに入社したという経緯があります。特に地方では中小企業の経営者と直接向き合う機会が多く、その点でもとても刺激的な環境でしたし、自由度の高い職場だったのも大きな魅力でした。

ただ、私と父とは50歳の年の差があり、父も今年で81歳になります。そんな父の背中を、もっと近くで見ておきたいという思いが強くなり、リクルートを2年弱で退職し、日南グループに入社しました。

地元企業の連携が生む、今後の展開に期待

他企業との協業や地域との連携について、どのようにお考えですか?

堀江:正直なところ、他企業との連携については、まだまだこれからだと感じています。ただ、私自身は非常に強い関心と意欲を持っており、積極的に取り組んでいきたいと考えています。たとえば今、日南グループとして私が取り組んでいるのが、父の出身地である宮崎県西都市での地方創生プロジェクトです。人口減少が進む地域に対して、地元企業同士が連携し、ゼロから新しい価値を生み出す──そういったチャレンジに、非常に面白さと可能性を感じています。実際にはまだ気づかれていないだけで、地場企業同士が協力すれば実現できることはたくさんあると感じています。

同じように、私たちが拠点を置く府中市でも、何か貢献できないかと市役所に伺い、「日南グループのものづくりで地域の課題解決ができることがあれば、ぜひお手伝いしたい」とお話させていただいています。府中に根差した企業として、多摩地域への貢献も今後の大きなテーマだと捉えています。

多摩イノベーションエコシステムのホームページも拝見しましたが、ものづくりに携わっている企業が多く、業務面でお手伝いできることがあるのはもちろん、「こんな面白いことをやっている企業があったんだ」という新たな発見もありました。だからこそ、受発注といった枠を超えて、イベント企画や共創プロジェクトなど、もっと自由な形でのコラボレーションができたら、すごく面白いのではないかと感じています。

社員の方々が胸を張って語れる会社を目指したい

株式会社フォルムをどのような会社にしていきたいと考えていますか?

堀江:最終的には「やっぱり人だな」と、強く感じています。世の中に無数の企業がある中で、社員の方々がフォルムと縁を持ったというのは、ものすごく奇跡的なことだと思っています。だからこそ、私が一番実現したいのは、「この会社に入って本当によかった」と心から思ってもらえるような会社にすること。そして、社員が自分の家族や友人に「うちの会社、いい会社なんだよ」「なんか面白いことやってるんだよ」と胸を張って語れるような、そんな組織をつくること。ありきたりかもしれませんが、私は本気でそこを目指したいと思っています。

今、私がこうして仕事をさせてもらえているのも、日南グループとしては56年、フォルムとしては35年にわたって先人たちが築き上げてきた土台があるからこそ。その上に、私たちは立たせてもらっているのだと思っています。だからこそ、これからを担う私たちが、社員一人ひとりにとって誇れる会社、仲間や家族に自慢したくなるような会社をつくっていく。それが、時代が変わっても揺るがない普遍的な目標なのではないかと感じています。

会社情報

会社名 株式会社フォルム
設立 1990年11月
本社所在地 東京都府中市四谷4-59-17
ウェブサイト https://www.nichinan-group.com/group/FORM_Corporation.html
事業内容 家電製品、情報機器などの試作品製作