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祖父が紡いだ想いを孫がつなぐ。からだにやさしい惣菜を届けるクックたかくらの挑戦

有限会社クックたかくら

取締役 鈴木 大将

インタビューに答えていただいた鈴木大将氏。手に持っているのは大豆ミート

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 冷凍惣菜の製造・卸を軸に、ヴィーガン対応の「ベジ惣菜」や無添加の「オーガニック惣菜」を手がけるクックたかくら。大豆ミートの活用や農家との連携を通じて、サステナブルな食のあり方を追求しています。現在、創業者である祖父からの事業継承に取り組む取締役・鈴木大将さんに、クックたかくらのこだわりと事業への思いを伺いました。

きっかけは母のアトピー性皮膚炎の改善から

創業の経緯をご紹介いただけますか?

鈴木:創業者は私の祖父母です。当時、娘である私の母がアトピー性皮膚炎に悩んでおり、「日々の食事を見直すことで、何か改善の糸口が見つかるのではないか」と考えたのが始まりでした。まずは有機栽培や国産の食材、添加物を使わない手作りの料理を家庭で試し、それを母に食べさせたところ、体調が改善。そこに可能性を感じた祖父が「食の力をもっと広げたい」と考え、個人事業主として「ヘルシーショップたかくら」を開業しました。今から約40年前のことです。

当時は「有機栽培って何?」「添加物はあって当然」という時代で、売上はなかなか伸びず、全国から仕入れた野菜が売れ残って廃棄せざるを得ないこともありました。その現実に心を痛めた祖母が、野菜を使って惣菜を作り、それを店頭で販売したところ、思いのほか好評だったんです。ここから“惣菜”という道が開けていきました。

祖父は「これはいける」と勝負に出て、惣菜の製造・販売を本格化。1992年7月1日、有限会社クックたかくらとして法人化し、現在の事業の礎を築きました。こうして、家族の健康を願う気持ちから始まった食の取り組みが、今のクックたかくらの原点になっています。

家業への気づきと継承への決意

鈴木様が入社されたのは、いつごろでしょうか?

鈴木:私がクックたかくらに入社したのは、2022年4月。ちょうど今で3年半ほどになります。でも実は、それまで家業として本格的に意識したことはありませんでした。というのも、幼いころから家では何かを作って売っているという感覚はあったものの、「会社」として認識していなかったんです。自分の身内が事業をやっているという実感を持ったのは、コロナ禍が始まった2020年。大学院に進学し、スポーツ国際開発学(※1)を専攻していたのですが、授業がすべてオンラインになり、実家で過ごす時間が増えたことで、初めて“自分の家の仕事”を目にするようになりました。その光景に興味を持ちはじめ、社長である祖父に話を聞いてみたんです。すると、大豆ミートの惣菜など、環境や健康を意識した商品を20年以上も前から手がけていたことを知り、「自分が生まれた頃から、そんな最先端のことをやっていたのか」と驚きました。

そこから、自分でも食のことを学び始めました。スポーツを続けるには健康な体が必要で、そのベースにはやっぱり“食”がある。そうしたことが自然と腑に落ちて、「これは自分が引き継ぐべきことなのでは」と思うようになりました。もし自分が継がなければ、誰にも知られずに終わってしまうかもしれない。そう考えて、私自身が手を挙げ、クックたかくらに入社する決意を固めたのです。

※1.スポーツを通じて国際的な開発や社会的課題の解決に貢献することを目的とした学問分野

プラントベースとオーガニック、二つの惣菜ライン

現在の事業内容を改めてご紹介ください。

鈴木:当社の主な事業は、冷凍惣菜の製造です。現在はBtoBを中心とした卸販売を行っており、生協などの会員制宅配業者様や、自然食品への理解が深い企業様を主な取引先としています。いずれも、食の安全性や品質にこだわる消費者の皆様に惣菜を届けることができる、大切なパートナーです。

製品は大きく分けて二つの軸があります。一つは、調理場に動物性原料を一切持ち込まず、植物性原料のみで作る「ベジ惣菜」。プラントベース(※2)のこのシリーズは、厳格なヴィーガンの方にも安心して召し上がっていただけるものです。もう一つは、創業当初から30年以上にわたって作り続けている「オーガニック惣菜」。こちらはお肉や魚といった動物性食材も用いながら、国産・無添加にこだわった、昔ながらの手作り惣菜です。中でも私たちが自信を持っているのが「コロッケ」です。たとえば、ポテトコロッケはじゃがいもと大豆ミートを使用し、クリームコロッケは牛乳を使ったものと豆乳を使ったものの2種類を用意しています。どれも多くのお客様からご好評をいただいている看板商品です。

また、私の祖父であり創業者でもある高倉には、「良いものには正当な対価を払うべき」という強い信念がありました。生産者から安く買って利益を出すのではなく、納得のいく価格で仕入れる。そうした姿勢が信頼関係を生み、今でも生産者の方々に柔軟に対応していただける関係性を築けていることは、当社にとって大きな財産だと感じています。

※2. 植物性食品を積極的に取り入れる食事スタイル

地元・東久留米の企業と連携

他企業との協業事例があればご紹介いただけますか?

鈴木:現在、東久留米市に拠点を置き、不動産・飲食業で事業を展開する株式会社タネニハと連携し、同社の農地で採れた野菜を惣菜に使用しています。これらの商品は、タネニハさんが運営する東久留米のカフェ&レストラン「felice di filippo(フィリッポの幸せな食卓)」へも卸しており、同じく同社が運営するカフェ「kinone coffee&flower」でも「ベジバーガー」などを販売いただいています。

東久留米は“水のまち”として知られており、都内で湧き水が見られる希少な地域です。水と農業は切っても切れない関係にありますが、手を加えなければその自然も枯渇したり、汚染されたりする可能性があります。だからこそ、自然と農が暮らしのすぐそばにあることの大切さを、実際の体験を通して感じてもらえる場づくりを、タネニハさんとともに進めているところです。

また、クックたかくらはこれまで卸販売が中心で、一般のお客様との接点が限られていました。タネニハさんとの協業は、私たちが大切にしている原材料の選定や手づくりの惣菜づくりといった“想い”を、より多くの人に知っていただくきっかけにもなっています。

野菜の粉末を練りこんだコロッケを開発

2024年にはベジタブルテック株式会社と新商品を開発されていますね。

鈴木:ベジタブルテック株式会社と連携し、「グッドミーの彩りコロッケ」という商品を共同開発しました。彼らの強みは、野菜を粉末化しても色素や栄養素がほとんど損なわれない技術にあります。その野菜パウダーをコロッケの具材に練り込むことで、鮮やかな色味とともに、自然な栄養がしっかり摂れるコロッケが誕生しました。野菜特有のえぐみやクセも抑えられるため、お子さんに野菜を食べさせたい親御さんにも喜ばれる商品になっています。

そもそもこの取り組みは、食生活に制約のあるアスリートを支援することがきっかけでした。「忙しくて食事をつくれない、栄養バランスに不安がある」、そうした声に応えるべく、ベジタブルテックさんから「粉末野菜を活用して、惣菜という形で提供できないか」とご相談いただきました。栄養補助として粉やカプセルを摂取することに抵抗を感じる方も多く、惣菜という“日常に近い形”での提供がベストだと考え、共同開発に至りました。

私自身、大学院ではスポーツ国際開発学を専攻していたこともあり、アスリートの栄養面を支える活動には強い関心がありました。実際に、女子アイスホッケー日本代表の姉妹選手に惣菜を提供するなど、現場への支援も行っています。

多摩地域の生産者や事業者とのつながりを求めて

多摩イノベーションコミュニティに参加した理由は?

鈴木:約40年前、当社の創業者である高倉が全国をまわって生産者を探していた当時、東京には有機栽培を手がける農家がほとんどいませんでした。そのため、意外にも東京、とくに多摩地域は“空白地帯”だったという認識があります。だからこそ今、私は多摩地域の農家さんや事業者の方々と新たな形でつながりを築いていきたいと考えています。その第一歩として、多摩イノベーションエコシステムに参加させていただきました。どうすれば地域の農産物や資源を生かし、地域の生産者と連携できるのか。それが私たちの現在の大きな課題です。

現在は東京都の生産者の皆さんと連携し、都市農業を支えるような商品(例:ヴィーガンちらし寿司の素)の開発が進んでいます。東京都の農家さんは自信を持って栽培に取り組んでおられ、市場でも高評価を得るような野菜をつくっていらっしゃいますが、それを十分に生かしきれていない現状もあります。この取り組みをきっかけに、多摩地域の農家さんを応援する専用ブランドの立ち上げも構想中です。有機栽培に限定せず、「ちょっと見てほしい野菜があるんだけど」と気軽に声をかけていただけるような仕組みにしたいと考えています。

とくに、市場に出せない“規格外野菜”を抱えている農家さんにこそご相談いただけたらうれしいです。私たちの惣菜は手作りが基本ですし、たとえ形が曲がっていても、切ってしまえば問題ありません。そうした野菜を私たちが製品として活用できれば、フードロスの削減にもつながり、農家の皆さんにとっても新たな収入源になります。そして何より、地域の資源が地元の誇りとなっていけば——それが私たちの願いです。

事業継承と惣菜の魅力を「伝える」挑戦

今後の目標をお聞かせください。

鈴木:クックたかくらがこれまで築いてきた惣菜づくりの軸は、私の代になっても決してぶらさず、大切に継承していきたいと思っています。そこに、私なりのエッセンスを加えるとすれば、「わかりやすく伝えること」と「広く届けること」。これは必ず、私の代で成し遂げたい目標です。

実は私自身、20年以上、何も意識せずにこの惣菜を食べてきました。それがある日、「実はすごいことをやっていたんだ」と気づいた。この実感を、できるだけ多くの方に届けたいのです。その“気づきのきっかけ”を増やすために、まず取り組んだのがECサイトの立ち上げです。これまでBtoBを中心に事業を展開してきた私たちにとって、一般のお客様と直接つながれる場を持つことは、大きな一歩でした。

もう一つ、大切にしたいのが「食育」です。子どもも大人も、食に対する意識はいつからでも変えられる。実際、私自身がそうでした。だからこそ、食に向き合うきっかけを提供し続けたいと思っています。

私たちは惣菜づくりのプロですが、それ以外の分野まで手を広げるには限界があります。だからこそ、志を同じくするパートナーと連携しながら、ともに価値を広げていくことが、これからのクックたかくらの在り方だと考えています。より多くの人とつながりながら、私たちの惣菜を、そしてその背景にある想いを、広く届けていきたいと思います。

会社情報

会社名 有限会社クックたかくら
設立 1992年7月1日
本社所在地 東京都東久留米市南沢3-1-2
ウェブサイト https://cook-takakura.co.jp/
事業内容 惣菜製造部/菓子製造部/コミュニティ創造事業部