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花の命を次へつなぐ。アップサイクルで“お花循環型社会”の実装に挑む

and now合同会社

代表/アップサイクルフラワーアーティスト 斉藤 四季

インタビューに答えていただいた代表の斉藤四季氏

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 華やかに飾られたのち、役目を終えて廃棄されてしまう花。その行き先に新たな選択肢を提示しているのが、and now合同会社のアップサイクル事業です。回収した花を紙へと加工し、次の用途へとつなげることで、花の命と経済が循環する仕組みを実装しています。今回は、代表を務めるアップサイクルフラワーアーティストの斉藤四季氏に、事業内容とそこに込めた思いを伺いました。

廃棄される花を紙へ。循環を生むアップサイクルの取り組み

現在どのような活動をされているのか、教えてください。

斉藤:大まかに言うと、イベントやお祝いの場で使われたお花を引き取らせていただき、それを原料に紙をつくる活動をしています。式典などで華やかに飾られたお花は、イベントが終わると、ほとんどの場合すぐに廃棄されてしまいます。通常であれば、飾られたその瞬間に、お花の役割は終わってしまうんですよね。でも、そうしたお花を「ただ終わらせてしまう」のではなく、もう一度、価値のある形に変えたい。そこで原料として紙に生まれ変わらせ、さらに新しい役割を持たせていく。お花の命と経済の両方が循環する、「お花循環型社会」を目指して取り組んでいます。

現在は紙づくりに加えて、試作段階ではありますが、その紙を使った育苗ポットの開発も進めています。この紙のポットで花を育て、芽が出たら、より大きなプランターやお庭へ植え替えていく。一般的には、その際にプラスチック製の黒いポットが使われますが、私たちが目指しているのは、紙でできた循環型のポットです。このポットは、そのまま土に植えることができます。しかも素材は、もともとお花。分解されながら、次に育つ花の栄養分になっていくんです。育てるプロセスそのものの中でも、循環が生まれる仕組みをつくりたいと考えています。

こうした取り組みが評価され、日本ホビーショー内のコンテスト「JAPAN HANDMADE OF THE YEAR」で、2年連続で東京都知事賞をいただきました。さらに、2025年には大阪・関西万博にも出展しています。会場では、完成した紙を実際に持ち込み、「これはお花を原料にしてつくった紙なんです」とお伝えしながら、その紙にスタンプでアートをしていただく体験を行いました。参加者の方がつくった作品は、その場でメタバース美術館にも展示しました。

ドライフラワーを超えて「紙」へ

この事業を行うようになった背景を教えてください。

斉藤:個人的な思いとしては、とてもシンプルなんです。イベントなどで使われたお花が、きれいに飾られて、役目を終えた途端に捨てられてしまう。その光景を目の当たりにしたときに、ちょっと心に刺さるものがあって。生き生きと、きらびやかな瞬間だけ使われて、弱くなったら手放されてしまう。その在り方が、なんだかかわいそうだなと感じたんです。

もともと花が好きだったこともあり、お花の成分が持つ力に惹かれて、アロマの世界に入りました。アロマテラピーの施術を学び、実際にその分野の仕事にも携わっていました。ところがコロナ禍で、せっかく生産されたお花が、イベントの中止によって使われず、廃棄されていく状況が生まれてしまった。これは何とかしなければ、と考えて最初に取り組んだのが、ドライフラワーづくりでした。

ドライフラワーは「素敵ね」「きれいね」と言っていただける一方で、「家に持って帰るのは大変よね」という声も多くて。実際、飾っていても埃がすぐにつくし、その埃を取ろうとすると、ポロポロと花が落ちてしまう。扱いが難しいという感覚は、自分自身も強く感じていました。やっぱり、みんな同じことを感じているんですよね。

ドライフラワーをたくさんつくったものの、捨てるのは嫌だし、このままでは終わらせたくない。何か別の形にできないかと、かなり試行錯誤を重ねました。その中でたどり着いた一つの答えが、「紙」だった、というわけです。

火を使わないこだわり

作り方は? また、工夫されている点はありますか。

斉藤:作り方自体は、基本的に和紙とほとんど同じです。原材料はとてもシンプルで、主に花と葉と茎、水、そして糊。配合の85%以上はお花が占めています。こうして生まれた紙を『日本お花の紙』と呼んでいます。この紙の魅力は、まず「同じものが二度とできない」こと。引き取らせていただくお花は、イベントごとに種類も量も内容も異なるため、仕上がりは毎回まったく違った表情になります。茎が多ければ少し硬めになり、茎の茶色がそのまま紙に残ることもある。一方で、花びらを多く使うと、ふんわりと柔らかな質感になるんです。花びらと茎のバランスによって、色も手触りも大きく変わるので、正直なところ、完成するまでどうなるかは分かりません。その予測できなさも含めて、この紙ならではの個性だと思っています。

工夫している点で一番大きいのは、「火を使わない」ということです。もともと廃棄されるはずだったお花を引き取らせていただき、紙に生まれ変わらせる。その時点で、焼却されるはずだった工程は一度なくなっていますよね。なのに、紙にする過程で火を使ってしまったら、結局CO₂を出してしまう。それでは意味がないなと思ったんです。

一般的な和紙づくりでは、木の皮を柔らかくするために火を使う工程がありますし、正直、お花の場合もそのほうが効率的です。でも、せっかく環境負荷を減らせる取り組みなのに、ここで私が火を使ってしまったら本末転倒だな、と。だからこそ、この工程だけは「火を使わない」方法にこだわって、試行錯誤と研究を重ねてきました。

美術文化協会との相互連携

これまで、他社と連携した取り組みなどはありますか?

斉藤:たとえば、美術文化協会さんとの取り組みがあります。美術家の方々が多く所属されている協会で、画家さんをはじめ、本格的に制作をされているアーティストの方がたくさんいらっしゃいます。その美術文化協会さんが、大阪市立美術館と天王寺動物園を会場に、エキスポ記念の展示会を開催されることになり、そこに私たちも参加させていただきました。デジタルアートやNFTアートのアーティストの方々と一緒に、展示という形で関わらせていただいたんです。一方で、私たちが万博に出展した際には、今度は逆の形で連携を行いました。会場の壁面にプロジェクターを使って、美術文化協会の皆さんの作品を大きく投影する展示を行い、リアルアートと私たちの取り組みが交差する場をつくることができました。

「育てる・売る・つくる・回収する」を一つの場所で

今後こんなことをしてみたいな、と思い描いている事業はありますか?

斉藤:構想としては、お花を育てる場所、売る場所、それをアップサイクルしていろいろなものにする場所、できあがったものを販売する場所、そして使い終わったものを回収する場所、そうした一連のフェーズを、一つの場所で完結できたらいいな、という思いがあります。

本当にまだ夢の段階ではあるんですが、もし十分な土地があれば、そこでアウトドアを楽しんだり、人が自然と集まってくるような空間にしたいですね。お花が咲いていて、花の摘み取りができたり、その花を使って販売やワークショップをしたり、食と組み合わせたり。大規模でなくてもいいので、そうした循環のサイクルがしっかりと回る場所をつくれたらいいなと思っています。

アーティストとつながる場をつくる

吉祥寺にアトリエを構えて活動されている理由は?

斉藤:実は、吉祥寺という場所そのものに、かなりこだわりました。このあたりは漫画家さんをはじめ、クリエイターやアーティストの方がとても多いですよね。アーティストと自然につながれそうな場所、というイメージが最初からあったんです。実際にこのアトリエで、ドライフラワーの販売やカフェを併設した活動をしていた際は、たくさんのアーティストの方が集まってくれました。NFTアートの展示会を開いたこともありますし、結果的に、アーティスト同士がつながれる場として、少しずつ機能していたのかなと感じています。最近ではイベントとして月に一度、アーティストや音楽家、実業家の方々が交流できる場にもなっています。

企業と一緒に循環モデルを実装へ

今後の目標は?

斉藤:まずは、企業のSDGsに対する取り組みをお手伝いしていく中で、お互いに環境保全につながる仕組みをつくっていきたいと考えています。企業側にとっても意味があり、同時に環境にもプラスになる。そんな循環モデルを、まずはしっかり形にしていきたいですね。

その一例が、TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)さんとの取り組みです。2025年3月27日にまちびらきが行われた際、たくさんの祝い花が届いたようなのですが、そのお花を「紙にしてほしい」とご依頼いただきました。そこで、祝い花を原料に紙をつくり、その紙を今度は高輪ゲートウェイシティさんのオリジナルのしおりに仕立てたんです。

そのしおりは、万博の会場で、ご来場者の方々に配布されました。高輪ゲートウェイシティに届いたお花が、形を変えて、また高輪ゲートウェイシティのイベントの場に戻っていく。そんな循環の形が実際に生まれたことは、大きな手応えがありました。こうした流れを、もっと増やしていきたいと思っています。そこから先は、紙としてなのか、作品としてなのか、形はさまざまだと思いますが、少しずつ一般の方々にも届く展開につなげていけたらと考えています。

会社情報

会社名 and now合同会社
設立 2024年
本社所在地 東京都武蔵野市吉祥寺南町5-6-25 1F
ウェブサイト https://andnow.crayonsite.com/
事業内容 花のアップサイクル事業