惣菜盛付ロボットなどで人手不足対策に貢献 | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
惣菜盛付ロボットなどで人手不足対策に貢献

惣菜盛付ロボットなどで人手不足対策に貢献

コネクテッドロボティクス株式会社 取締役COO 佐藤 泰樹

本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。
このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

                                                     

JR武蔵小金井駅近くのアパートで産声を上げたコネクテッドロボティクス。当時の間取りは1Kでしたが、現在は東京農工大学の小金井キャンパス内に延べ600平方メートルの部屋を借りるまでに成長し、食を扱うロボットシステムの開発を進めています。佐藤泰樹取締役COOに、開発する上での苦労や同大学に本社を置くメリットなどについて聞きました。

飲食業の厳しい労働環境をテクノロジーで改善したい

御社は様々な食のロボットを開発されていますが、食のロボットにこだわる理由を教えてください

佐藤:CEOの沢登(哲也氏)の実家は山梨県で飲食店を経営していました。本人は東京大学を卒業後、京都大学の大学院に進んだ後、飲食チェーンを展開する企業に入社しました。

しかし、休暇も満足に取得できず、飲食業は長時間労働に支えられていることを知りました。しかも待遇は決して良くありません。こうした労働環境を改善するには、テクノロジーによる革新が必要との思いで、2017年から食品ロボットの開発に特化して取り組んでいます。

最初の製品は職人の技を再現するたこ焼きロボット

たこ焼きロボットが注目されていましたね

佐藤:実地でのノウハウを取り入れてたこ焼きロボットの動作を開発していきました。生地や具材を鉄板に均等に入れてたこ焼きを作るのですが、その際に焼き加減をAIで判断し、しっかり焼き上げるように回転させるロボットを開発して、話題になりました。開発にあたっては、職人の動きを体感することが必要となるので、私もたこ焼きの大手チェーン店で働きました。

CEOの沢登が自宅でたこ焼きパーティーを開いたことが、開発のきっかけです。たこ焼きをうまく作るのは結構難しいですよね。しかも暑い。その作業をロボットに任せれば見ていて楽しいし、作る人も楽になると思いました。ただ、残念ながら現在稼働しているたこ焼きロボットはありません。

そばロボットは1時間でそば150食の提供が可能

今は、そばロボットが店舗で活躍しているようですね

佐藤:JR海浜幕張駅(千葉市)の構内など5ヶ所で〝働いて〟います。双腕型のそばロボットは、お客様が券売機で食券を購入すると、1本目のアームが容器から生そばを取り出し、ゆでざるに投入します。もう1本のアームが、ざるをつかんでゆで、水でぬめりをとって冷水にさらしてしめます。その後、店員さんにバトンタッチして、出汁を注ぎトッピングを載せるという流れです。1時間で150食分を用意でき、1人分の作業をこなします。

駅で働く双腕型のそばロボット

そばロボットは他の麺類に応用できなかった

ロボットの開発はスムーズに進んだのですか

佐藤:最初のころは食材ごとの調理プロセスの違いも十分にわからないままでしたね。「そばロボットができれば、うどんにもラーメンにも転用できる」と思っていたのです。しかし、全くの別物なのですね。麺は全部、小麦粉でできていると思いきや、卵が混ざったラーメンは茹で時間や麺の扱いに違いがあったりして。美味しさの追求について、奥の深さがわかっていませんでした。進めば進むほど繊細で対応の難しさを知るという感じで苦労を重ねました。

そばロボットが作ったそば

ロボットを導入するだけでは食品工場の自動化は解決できない

今後力を入れていく領域はどこですか

佐藤:惣菜・中食市場です。市場は10兆円を超えており、単身世帯の増加などを背景に需要増が見込まれるものの、惣菜製造工程には全て人手が介入しています。例えばマーボー豆腐。スプーンだと豆腐が崩れるので、手袋をした手ですくっています。弁当の盛り付けも惣菜の種類が多いため、手間がかかります。こうした厳しい環境下なので、現場は常に人手不足に悩まされており、生産性は極めて低い状況にあります。だからといって、ロボットを導入すればすべてが解決するといった単純な問題ではありません。とんかつ弁当で、肉を乗せた後、その下にコーンを置くという作業を見たことがありますが、ロボットではとても対処できない工程ですよね。

人間が備えている細やかな感覚やスピードをロボットに再現

食品工場向けロボットの開発状況はどうですか

佐藤:現在大手スーパーの工場で盛付ロボットが稼働していますが、惣菜によって食材が異なり、大きさや質感が一律ではないため、開発は大変です。ポテトサラダのような粘性があるものをつかんで離すとある程度まとまった形で落ちていきますが、ひじきは水分量が少なくパラパラしているので、高い位置から落とすとトレイに収まらず、広がってしまいます。ロボットの動きを制御することで、人間が自然にコントロールしているこうした細かな感覚やスピードを再現し、きれいにトレイに収まるようにしています。

地元の加工会社などとは気軽に行き来できる関係を構築

多摩地域の企業と連携するケースはありますか

佐藤:八王子に本社がある菊池製作所と仲良くしており、ソフトクリームロボットやうどんのゆで麺機などの製造を委託しています。当社は福島県南相馬市に「南相馬ラボ」を開設していますが、菊池製作所の工場の一角をお借りして運営しています。小金井市などの地元企業にはステンレス加工や切削を頼んだりしています。気軽に行き来して相談できる関係性を構築しており、早さが勝負のような仕事の時は助かりますね。

東京農工大学に本社を置くことで信用力が上がった

東京農工大学に拠点を構えるメリットは

佐藤:小金井キャンパス内の「多摩小金井ベンチャーポート」に本社を置いていますが、国立大学の構内にあることで社会的な信用力がとても高いと感じています。大学構内にオフィスを構えることで学生や連携先企業の方の訪問数を増やすことができていると感じます。「オフィスに来てください」とお声かけするよりも、「大学の研究室にある開発現場を見に来てください」とお誘いする方が効果があります。ほぼ100%足を運んでくれます。皆さんワクワクして来られ、「やっぱり学食はいいなあ」などと言いながら、テンション高く帰っていかれます。また、スペースを広く利用できるところも魅力です。実は沢登が在籍していたこともあって東京大学に拠点を置くことも検討したのですが、土地柄もあって賃料も高いので、東京農工大学に決めたという経緯があります。現在のオフィス面積は、合計で600平方メートル。今では多摩小金井ベンチャーポートの中で最もスペースを利用しているスタートアップだと思います。

会社情報

会社名 コネクテッドロボティクス株式会社
設立 2014年2月
本社所在地 〒184-0012  東京都小金井市中町2-24-16 農工大・多摩小金井ベンチャーポート(東小金井キャンパス内)
ウェブサイト https://connected-robotics.com/

インタビューをもっと見る

LightBank株式会社(旧KKテクノロジーズ株式会社)のインタビュー
LightBank株式会社(旧KKテクノロジーズ株式会社)

常識を覆した長寿命LED電球を発明。多摩地域から日本を照らす照明メーカー

ヘルスセンシング株式会社のインタビュー
ヘルスセンシング株式会社

生き方は自分で決める。半導体のプロから睡眠解析のスペシャリストに転身

インタビュー一覧ページへ
コミュニティに参加する