地域課題解決に繋がる事業開発を促進させることを目的に、企業や自治体等が解決したい課題を発信し、その解決策を募るリバースピッチを開催いたしました。
第3回リバースピッチでは、ドライバー不足や小口配送の増加等によるドライバーの負担増加、高齢者ドライバーによる事故増加、交通弱者への対応など、多摩地域において課題の多い「物流・モビリティ」をテーマに、企業・自治体4者が共創案実現に向けたピッチを行いました。
この報告では、当日のイベントの様子や参加者の皆様からのご意見を紹介します。
本事業のご説明
事務局より本事業の全体像及び今年度の取組についてご説明しました。
事業の一つの柱である多摩イノベーションコミュニティで今年度取り組んでいるイベントとして、3種類のワークショップについてご紹介しました。そのうちのひとつで、今回開催する「プロジェクト創出ワークショップ(リバースピッチ)」では、地域課題解決に取り組む大企業や自治体等が抱えている課題やニーズについてご紹介いただき、マーケットイン型のプロジェクト創出に繋げることを目的としています。
また、ワークショップ等を通じて整理したビジネスアイデアの具現化に寄与する「ビジネスアイデア具現化支援」についてご説明しました。本取組では、多摩地域の課題解決に向けたビジネスアイデアを募集し、審査・選定後にビジネスアイデアの具現化に向けた個別支援、費用支援を実施します。
概要・共創事例のご説明
次に、事務局より第3回リバースピッチのテーマである「物流・モビリティ」に関する概観・共創事例についてご説明しました。
モビリティとは本来、物理的な動きやすさや社会の流動性を示す単語ですが、近年では、「ヒトやモノを移動させる手段」として使用されています。今回のリバースピッチでは、自動車やトラック・次世代モビリティ等のハードウェアに限らず、「物流」と「交通」を支える様々なソフトウェア・サービスも対象に共創の創出を目指しています。
物流・交通業界の動向として、EC市場の成長や人口減少に伴い物流・交通に関わる需要が増大している一方、それらを供給する労働力の慢性的な不足と低い生産性、2024年問題への対応が課題となっています。これに対して、「輸送の増加・維持」、「輸送の効率化」、「脱炭素化」の3つの観点において、イノベーショントレンドが生まれています。多摩地域においても、ラストワンマイル配送や交通空白地帯の解消に向け、ロボットによる配送やAIオンデマンド交通サービスの提供といったスタートアップと連携した取り組みが多数行われています。
「物流・モビリティ」分野における多摩地域での共創事例として、リーディングプロジェクト選定企業である株式会社イノフィスと株式会社B-Stormの取り組みついて紹介しました。株式会社イノフィスは倉庫や配送センターにおける労働環境の改善に向け、マッスルスーツを活用した腰への負担の軽減・生産性の向上に向けた検証に取り組みました。株式会社B-Stormは、自動走行搬送型ロボットを活用した中小の倉庫部門・業者向けの生産性向上や、人手不足の解消に向け、倉庫内の出荷作業へのAMR活用による効率化・省人化の検証に取り組みました。
最後に、「輸送の増加・維持」、「輸送の効率化」、「脱炭素化」の3つの観点より、登壇企業の共創ニーズについてご紹介しました。
リバースピッチ
続いて、登壇4者より、各者の紹介と共創ニーズ、共創パートナーについてのご説明をいただいたのち、参加者からの質疑応答を行いました。
当日のピッチの様子はこちら
- 八王子市 都市計画部 交通企画課
「『移動しやすいまち』の実現に向けた、新たなモビリティの導入検討」
八王子市は、東京都西部に位置し、都内では奥多摩町に次いで2番目に大きな市域を有する中核市です。八王子市基本構想・基本計画「八王子未来デザイン2040」では、市民が「行きたいときに、行きたいところへ簡単にアクセスでき、快適な生活を送っている」ことを2040年に目指す姿としています。市域の広い八王子市においては、鉄道・路線バス・コミュニティバスにより一定の移動機能は確保されているものの交通空白地域が市内至る所に存在しています。路線バスが通行できない極小な道路幅員や、階段や急勾配な坂等の高齢者にとって移動困難な箇所が存在しています。現状では、貸切りバスの運行やワンボックスタクシー、路線バスの延長等の共創によって、取り組みを進めている段階にあります。
交通空白・山間地域や丘陵地の住宅団地における交通アクセス機能の向上を目指し、共創パートナーとなり得る交通アクセス機能の向上を担うモビリティサービスを提供する企業を募集しています。
- SGホールディングス株式会社
「静脈物流の高度化によるサーキュラーエコノミーの実現」
SGホールディングスグループは、佐川急便を中核にお客様のあらゆる物流ニーズにお応えする総合物流企業グループです。SGホールディングス株式会社ではグループ企業の経営資源とスタートアップ企業の持つ新しいアイデアや自社にない技術を掛け合わせ、物流の改革の先に未来につながる価値を生み出していくことを目指し、オープンイノベーションの取組を推進しています。
動脈物流と呼ばれる「生産から消費」までの物流は効率化・高度化が進むのに対し、「リユースから再資源化」までの静脈物流においては効率化、最適化が進んでいません。そこで、最適化が進まず解決すべき課題が多数残る静脈物流事業の拡大に向けて、「排出者がルールに基づいて正しく排出を行い」、「輸送や再資源化を効率的に行う」ための事業アイデア・技術を有する企業との共創を希望しています。
- 東日本旅客鉄道株式会社 JR八王子支社
「輸送・交通からムーブメントへ」
東日本旅客鉄道株式会社では、「データの共同活用」や「実証実験等のフィールド活用」により、外部との連携をさらに拡大し、すべての人の「心豊かな生活の実現につなげる。」ことを目指しています。八王子支社は、首都圏への大動脈である中央線を中心に東京多摩エリア・山梨がフィールドとなっています。これまでにJR東日本スタートアッププログラムを通じて、利便性の向上や快適な移動の創造、地域活性化、社会課題等、協業による多様な取り組みを推進してきました。多摩エリアにおいても、沿線まるごとホテルや交通空白地帯での二次交通の導入等、取り組みを進めています。
全業界で人材不足の課題に直面している日本社会の中で、最も注目され最も下支えしている分野である「物流・モビリティ」に関して、「これまでの駅の概念を超える」や「観光を超える、変える」取り組みの実現に向け、そうした発想や技術を有する企業との共創を希望しています。例えば、駅構内有料ゴミ箱や革新的移動型モビリティ、交通空白地帯での物流移動、労働負荷低減の機能等、JR東日本のリアルの場を活用し、多摩から世界を変えるイノベーションを起こすご提案をお待ちしています。
交流会
最後に、登壇者と参加者、また参加者同士による交流会を実施しました。登壇した4者ごとにブースを設置し、参加者が登壇者に対して自社のソリューションの紹介や今後の共創に向けた具体的な議論が交わされました。各ブースともに、多くの方が集まり、積極的な意見交換が行われました。
また、参加者の方々はホワイトボードに貼られた、名刺と事業内容を記載したコメントカードを参考に、関心がある他の参加者と名刺交換や自社の紹介等、各々交流され、大きな盛り上がりを見せました。
参加者の意見
ご参加いただいた方の声を一部ご紹介いたします。このほかにも、具体的なご提案等、多数のご意見をいただいております。
・多摩地域の物流・モビリティに関する具体的な課題、今後取り組むヒントを得られました(中小企業)
・現在考えている社会課題に関するニーズを確認することができました(中小企業)
・企業が抱える具体的な困りごとを共有いただいたことで、自社ソリューションの提案可能性について検討することができました(スタートアップ)
多くの方にご満足いただけるイベントとなりました。
今後も多数のイベントを開催していきますので、ご関心のある方は是非ご入会ください!
今後のイベントスケジュール
https://tama-innovation-ecosystem.jp/event/workshop-2024/3106/
コミュニティの入会概要と申し込みページ
https://tama-innovation-ecosystem.jp/community/