料理における塩のように、ファインバブルでお客様を引き立てる | 多摩イノベーションエコシステム促進事業
料理における塩のように、ファインバブルでお客様を引き立てる

料理における塩のように、ファインバブルでお客様を引き立てる

株式会社塩 営業部長 駒澤心

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

                                                                  

 株式会社塩は、流体理論を応用した独自の技術を生かして、工作機械の性能を向上させる事業を展開しています。社内の壁一面に掲げられている特許の数々は技術力の高さを物語っており、国内にとどまらず、海外の企業からも多くの注目を集めており、最近では半導体や建設業の分野にも進出しております。駒澤増彦社長のご子息であり、営業部長でもある駒澤心さんに、株式会社塩のモノづくりへのこだわりや、今後の事業展開について話を聞きました。

インタビューに答えていただいた駒澤心さん

リーマンショックが追い風に

会社設立の経緯を教えてください。

駒澤:父はかつて半導体の後工程を行う会社を経営していましたが、もともとエンジニア出身だったこともあり、社長業よりモノづくりを追求したいという思いから、株式会社塩を2008年に立ち上げました。

2008年といえば、リーマンショックが起こった年でもあります。

駒澤:日本経済は長らく低迷してしまいましたが、幸いなことに弊社にとってはリーマンショックが追い風となりました。世界的な景気後退の影響で海外に工場を展開していた日本の製造業が、工場を国内にどんどん戻していったのですが、そこで重要視されたのが“生産性の向上”でした。そこで、工作機械の機能が向上できる我々の製品がスポットライトを浴びたのです。

ファインバブルで工作機械をスペックアップ

主にどのような製品を扱っているのでしょうか。

駒澤:ウルトラファインバブルという直径が0.001mmより小さな泡を発生させる「機能バブル水生成器SIO」です。社名にもなっているこのSIOを工作機械に設置するだけで、クーラント(冷却液)にファインバブルが発生し、より高い冷却効果と洗浄効果を発揮します。これにより加工現場での重要課題であるQCD(品質、コスト、納期)を刷新することができます。
 SIOのコア技術はこの“松ぼっくり状の構造”に詰まっています(※写真参照)。この特殊な構造には3種類の異なるバブルの生成方法が組み合わせられており、その設計・加工の技術力が我々の強みでもあります。

株式会社塩の技術力が詰まったSIOのコア部分
ファインバブルが出てくる様子。無数の細かい泡が水の中に広がっている。

塩のようにお客様を引き立てる存在に

「塩」という社名の由来は何ですか。

駒澤:どんな料理にも塩は欠かせません。目立たない存在として表には出てきませんが、塩加減一つで料理の味をまったく変えてしまう重要な役割を担っています。我々もいい塩梅でお客様を引き立てられるような存在でありたい、という思いを社名に込めています。

モノづくりへのこだわりや思いについて教えてください。

駒澤:社長はもともと半導体後工程の分野でやってきた生粋のエンジニアで、1ミクロンの精度にこだわるのが当たり前の環境で働いてきました。もしかしたら消耗品を売ってどんどん買い替えが発生するような商売の方が利益が出るのかもしれませんが、弊社の製品は精密さにこだわっており、耐久性も高く、高品質であるため、ゆうに50年以上は使えますし、そこに誇りを持っています。

これまで取得した特許が壁一面に掲げられている

海外で新たな事業に挑戦中

海外への展開もされているとのことですが、具体的にはどのような事業を行っていますか?

駒澤:これまで台湾、韓国、ドイツなどで、工作機械のスペックアップ用にSIOの販売を展開してきましたが、近年ではまったく違う分野での活用も広がっています。例えば、アメリカのバージニア工科大学で弊社の装置を使用したファインバブルによるバイオフォルム除去を行うなど、北米での新しい活用・導入に向けての評価テストを進めているところです。

東京都立大学と連携し、リーディングプロジェクトに参加

多摩イノベーションエコシステム促進事業のリーディングプロジェクトに参加されています。どのようなプロジェクトだったのでしょうか。

駒澤:建設業界におけるカーボンニュートラルを実現するための取組です。
 建設現場で利用されるセメントの製造工程で発生するCO2は、日本全体のCO2発生量のうちの3.4%を占めており、建設業界におけるカーボンニュートラルの実現は喫緊の課題とされています。そこで、当社のコア技術である機能バブル水生成技術を応用し、セメント製造時に発生するCO2を、高濃度でセメント水(生コンクリート)に溶解(固定化)させる技術の検証を行いました。当技術は、建設現場で余った生コンクリートを廃棄せずに、新たなセメント製造に再利用する際に活用でき得る技術です。
 ファインバブルは目に見えないため測定が不可欠ですが、弊社では測定を行うことができませんでした。都立大学にはファインバブルの測定装置と測定に関する知見があることから、連携によってそれらを活用させて頂きました。また、弊社でセメント水に関する知見がなかったため、都立大学から知見をお借りしました。
 当プロジェクトの検証において、従来技術に比べて2倍以上のCO2固定化性能を達成することができ、社会実装に向けて現在も取り組んでいます。

※リーディングプロジェクトの詳細については下記をご参照ください
https://tama-innovation-ecosystem.jp/project/environmental/391/

リーディングプロジェクトでの経験を語る駒澤さん

大学生との交流から、新たなアイデアを得る

御社は東京都立大学の授業にも協力されていると聞いています。

駒澤:授業の一環で、学生が企業に対して新規事業や課題解決案を提案する演習があるのですが、弊社もこのプログラムに協力しています。あるサウナ好きの学生からは、水風呂にファインバブルを入れれば冷却効果が上がるのではないかというアイデアをいただきました。歯科治療の際に使う水にファインバブルを使えば、洗浄効果が高まって少量の水で治療ができ、患者の負担も環境への負荷も低減できるのではないかといった、我々もなかなか思いつかないようなアイデアも印象的でした。こうした学生の方々との交流から、日々刺激をもらっています。

横のつながりが強い八王子ネットワーク

多摩地域の企業との横の連携は盛んですか?

駒澤:八王子はもともとモノづくりが盛んな土地で、技術力のある会社さんがたくさんあります。そういった会社と一つのチームのような形で連携・協力して開発を行うことも多々あります。また、八王子は市役所など行政のサポートが手厚いと感じています。ちょっと困ったぞというときに「助けてほしい」と言うと、地元のネットワークを駆使して企業を紹介してくれることもあります。八王子は地域のつながりがとても強く、仲間意識が高いと感じます。

駒澤さんは商工会議所の次世代工業研究会で役員としても活動するなど、地元のつながりを大切にされている

会社を発展させるため、いまは種まきの段階

今後の目標はありますか?

駒澤:いまはこれまでやってこなかったところに種まきをたくさんしている状態です。工作機械向けの製品以外にも、半導体向けの洗浄や、アメリカへの進出など新たな分野に取り組んでいます。それらをこのまま終わらせないように、しっかり刈り取っていって、会社の規模を大きくしていきたいです。また、会社の中では私が最も年下なので、もっと若い人材を採用して、会社をより成長させていきたいと考えています。

会社情報

会社名 株式会社塩
設立 2008年8月
本社所在地 東京都八王子市横山町21-12 池田ビル2階
ウェブサイト https://sio-miu.co.jp/
事業内容 ファインバブル生成器をはじめとした産業向けの装置メーカー。ファインバブルを活用し、工作機械・加工分野、半導体製造工程や各種洗浄工程での「生産性の向上、QCDの刷新」を得意としている。標準製品に加え、顧客が抱える問題点や課題に合わせたオリジナル製品の開発業務、工程改善、生産性向上に関するアドバイスや提案なども行っている。

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