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東京農工大学発ベンチャーが挑む、獣医療ネットワークと発酵食品の可能性

株式会社クジーンラボ

代表取締役 澤上 一美、取締役 原 正幸

インタビューに答えていただいた代表取締役の澤上一美氏(左)と取締役の原正幸氏(右)

 本事業では、地域内外の中小企業・スタートアップや大企業、大学等が連携して、地域の課題解決を図るためのプロジェクトや、多様な主体が交流できる会員組織(コミュニティ)の立ち上げなど、イノベーション創出に向けた取組を進めています。このインタビュー連載では、多摩地域のイノベーションをリードする注目企業をご紹介することで、皆様に多摩地域の魅力を発信していきます。

 株式会社クジーンラボは、東京農工大学発のベンチャーです。同社は「獣医療に“情報”と“発酵”の革命を」という理念のもと、納豆菌・麹・乳酸菌などの食品成分を活用した抗ウイルス・抗菌研究と、動物病院向けの情報基盤・検査支援サービスに取り組んでいます。今回は、代表取締役の澤上一美氏と取締役の原正幸氏に、事業の詳細を伺いました。

東京農工大の水谷教授が立ち上げた大学発ベンチャー

澤上様の社長就任の経緯を教えてください。

澤上:もともと当社は、東京農工大学の水谷哲也先生が起業当初から関わっている農工大発のベンチャー企業です。会社自体は2022年に創業したのですが、私は2023年10月に水谷先生からお声がけいただき、社長に就任しました。前職では、PCR検査などで使用される全自動装置の開発を行っており、それまで手作業で行われていた実験プロセスの完全自動化を目指す会社に所属していました。装置の設計を行うエンジニアと、実際に実験を行う研究者では専門分野が異なるため、両者の間にギャップが生じやすいのですが、その橋渡し役として、技術営業のような立場で長年活動してきました。

現在取り組まれている事業について教えてください。

澤上:獣医療ネットワークの構築が、現時点で最も大きな目標の一つです。加えて、抗ウイルス作用を持つ発酵食品の開発や、動物医療分野における迅速診断の導入、具体的にはPCR検査の仕組みをどう応用できるかという点にも取り組んでいます。また、現在、売り上げの大きな柱となっているのがコンサルティング業務です。大学発のベンチャーであり、バックグラウンドに大学の先生がいらっしゃるという点が強みになるので、そうした専門性や研究知見を活かし、アドバイザー的な立場での業務も行っています。

獣医療の情報共有プラットフォーム

獣医療ネットワークとは、具体的にどのような構想でしょうか?

澤上:『VetProLink(ベットプロリンク)』というサービスを構想しています。これは、獣医療に関わる人々をつなぐネットワーク型の情報共有プラットフォームです。具体的には、全国の獣医師の先生方や獣医系の大学、動物病院などにご参加いただいて、情報の共有と連携ができる場をつくることが目標です。獣医療の現場における情報の不足は、診療の質向上にも直結する大きな問題だと感じています。そのため、まずは情報の集約と可視化を実現し、教育や現場医療の基盤を支える存在として、『VetProLink』を立ち上げていきたいと考えています。

現在の進捗状況について教えてください。

澤上:現在は先生方へのヒアリングを少しずつ行っている段階です。「どんなツールだったら使ってみたいか」「どんな形のプラットフォームなら協力してもらえそうか」といった点を伺いながら、サービスの方向性を探っているところです。獣医療の業界は、これまで個人事業主を中心に成り立ってきた側面が強く、業界全体で統一された仕組みが十分に整っていないのが現状です。目標としては、全国の獣医系大学すべてに参加していただくこと、そして動物病院は3000件、獣医師は1万人といった規模感を掲げています。無謀な数字かもしれませんが、5年ほどのスパンでそこに近づけたらいいなと考えています。

コロナ禍で生まれた研究成果を、実用化へとつなげる

抗ウイルス発酵食品の開発は、どのような経緯で取り組むようになったのでしょうか?

澤上:きっかけはコロナ禍の時期に、納豆メーカーのタカノフーズ株式会社と、水谷先生をはじめとする研究チームが連携して行った研究です。その中で、「納豆の抽出液が新型コロナウイルスの培養細胞への感染を阻害する」という結果が得られました。そこから水谷先生ご自身が「これは食品の分野に応用できるのではないか」「会社として事業化したい」という思いを持たれて、クジーンラボの起業に至ったという背景があります。私たちが現在進めている抗ウイルス発酵食品の研究も、まさにその流れを受け継いだものです。

原:発酵といっても納豆だけに限らず、酵母など他の発酵素材にも広げていけたらと考えています。イメージとしては、食べることで免疫力が高まるといった、いわゆる健康食品に近いものです。私たちの強みは、自社内で実験や評価ができる体制を持っていることです。水谷先生を含め、裏付けとなるデータをしっかり出せる環境があるのは大きいと感じています。ただ、研究でどれだけ効果を証明できたとしても、それをどう製品化するかというのはまた別の段階になります。私たちだけでは商品化まで手が回らない部分もあるので、最終的には食品メーカーとの連携という形で進めていけたらと考えています。

多摩地域の食品メーカーと連携できれば

食品メーカーと連携するうえで、どのような課題がありますか?

原:一番難しいのは、こちらの技術や素材とうまくフィットする食品メーカーさんを見つけることです。たとえば、納豆以外の発酵食品の製造現場では、納豆菌が非常に強い為、他の微生物の生育を制限してしまう可能性が出てきます。実際、酒造メーカーの方は納豆を食べないというくらい、現場ではかなり気をつけられています。そうした事情もあり、現在は模索している段階です。規模としては、柔軟に対応してくれるような小規模のメーカーさんの方が合うのかもしれないな、と感じています。もし多摩地域で一緒にやってみたいと手を挙げてくださる企業さんがいれば、ぜひご一緒させていただきたいです。

抗ウイルス発酵食品として、具体的にどのようなアイデアをお持ちですか?

原:たとえば、米粉パンみたいな感覚で、『納豆チーズ』のような商品があったら面白いなと思っています。見た目はチーズだけど、実は納豆をベースにして形をつくっている。そんなイメージです。ただ、これを実際に製品化するとなると、規制や規格、安全性の評価など、クリアしなければいけないハードルがたくさんあります。やはり「ちょっと家で作ってみました」では通用しないですし、しっかりとした品質と再現性を担保して商品として仕上げるには、企業との連携が必要不可欠です。「納豆チーズで腸活」、という切り口も面白いと思うので、多摩地域の企業さんで一緒に取り組んでくれるところがあるといいですね。

澤上:やはり食品はすごく魅力がありますよね。誰にでも分かりやすいし、社会とのつながりを実感しやすいというか。前職ではコロナ前からPCR関連の仕事をしていたんですが、コロナ前は「それって何の仕事?」とほとんど理解されなかったんです。でも、コロナ禍でPCRが注目されて、「テレビで見るあのPCRの開発に関わってたんだよ」と説明できるようになって、少し誇らしい気持ちになりました。そういう経験もあって、食品の仕事はより直接的に社会に貢献できる実感があるなと感じています。多くの人にストレートに伝わるものを、自分の手で作れる。その魅力に惹かれて挑戦してみたいと思っているところです。

PCR導入支援やコンサルティングなど、多角的な取り組み

獣医師向けのPCR導入やコンサルティングについてもご紹介ください。

澤上:都市部の動物病院では検査センターに検体を送って診断できますが、地方では結果が返ってくるまでに1週間ほどかかることもあり、診療が滞る原因になっています。だからこそ、各病院でPCR検査ができる仕組みを整えたいと思っています。たとえば今、SFTSという人獣共通感染症が問題視されていますが、手術前にその感染リスクを把握できるかどうかで、医師側の対応も大きく変わります。現場で即時に検査できる体制があれば、安全性も診療の質も高まります。

コンサルティング先としては、どのような企業とお取り組みされていますか?

原:守秘義務があり詳細はお伝えできませんが、前述のタカノフーズ株式会社に加え、私が所属する株式会社フコクの獣医療分野への参入を検討するにあたり、市場調査をクジーンラボで支援しています。フコクはライフサイエンス領域の製品ラインアップ拡大の一環として、薬剤耐性菌を迅速に把握するための「薬剤耐性菌検査チップ」の展開も視野に入れています。私たちは動物病院を訪問し、ヒアリングを重ねながら現場のニーズを収集しています。

獣医療と発酵の二本柱で、社会に貢献する

最後に、今後の展望を教えてください。

澤上:やはり社会貢献という部分はどうしても意識しています。私自身、獣医療の分野に外部から入ったことで、「え、こんな状況なんだ」と驚くことが本当にたくさんあって。その感覚を大事にしながら、少しずつでもこの業界のベースを引き上げていきたいです。情報を共有するための仕組みや場をつくることで、「あそこに行けば何か分かる」「ここに入れば、いろいろ教えてもらえる」と感じてもらえるような存在になれたらいいなと。全国の獣医師の先生方としっかりつながっていけるようなネットワークをつくるのが、私の理想です。そうした情報の共有によって、救われる飼い主さんやペットも出てくるかもしれませんし、そう考えると、やはり価値のある取り組みなのではないかと感じています。

原:獣医療の分野と発酵食品、両方を進めていく二本柱の形が理想かなと思っています。どちらも利益より社会貢献を大事にしたい。人も動物も、みんなが健康に生きられる社会になったらいいなと。今はペットも家族という時代ですし、そういう気持ちに寄り添った活動をしていけたらと思っています。

会社情報

会社名 株式会社クジーンラボ
設立 2022年6月
本社所在地 東京都府中市幸町3丁目5番8号 東京農工大学農学部7号館1-11C
ウェブサイト https://cuisine-laboratory.com/
事業内容 抗ウイルス・抗細菌・抗毒素のスクリーニング法に関する調査研究/抗ウイルス研究等に基づく食品機能の向上及び商品開発に関するコンサルティング業務/獣医師に向けた情報提供サービス業務(VetProLink)/ペット・家畜向けの臨床検査業務/食品製造法及び食品保存法の開発/医薬品・サプリメントの研究及び開発/食品の市場調査、分析及び販路の開拓・拡大並びに販売の促進及び支援/食品及びペット・家畜関連商品のブランド構築に関するコンサルティング及び実施/前各号に附帯又は関連する一切の事業